眠り姫と生贄と命の天秤
火を灯せる程度の魔法が標準的な世界で、リコは人を殺めることができるほどの魔力を持っていた。この国では珍しい薄桃色の髪と、青に紫、緑が混ざる不思議な瞳のせいもあって、『魔女』と疎まれていた。
だから、魔力をなくすために、魔女ではなくなるために、怪しげなものから歴史書まで、関係しそうな本をひたすら読んだ。結果として、リコは魔女のままだった。
その中には魔女が出てくる大衆小説や、単にリコが読みたかっただけの恋愛小説も含まれていた。愛人の一場面は、少し大人向けの恋愛小説のものだったと思う、おそらく。そういう本を読んでいたのは否定できないが。
「別に、あ、愛人じゃなくて……結婚したばっかり、とかでもよかったんじゃないのか」
キトエは自分で言って自分で恥ずかしくなったのか、思いきりそっぽを向いた。たしかに屋台の男性を鼻白ませて話をそらすなら、それでもよかったか。そう思ったら、急速に首筋から頬に熱が集まってくるのを感じた。『結婚したばかり』のフレーズが頭の中を回る。
キトエと、結婚する。とても幸せなはずなのに、胸の痛みが同時にあった。
「このあたりでいいか?」
だから、魔力をなくすために、魔女ではなくなるために、怪しげなものから歴史書まで、関係しそうな本をひたすら読んだ。結果として、リコは魔女のままだった。
その中には魔女が出てくる大衆小説や、単にリコが読みたかっただけの恋愛小説も含まれていた。愛人の一場面は、少し大人向けの恋愛小説のものだったと思う、おそらく。そういう本を読んでいたのは否定できないが。
「別に、あ、愛人じゃなくて……結婚したばっかり、とかでもよかったんじゃないのか」
キトエは自分で言って自分で恥ずかしくなったのか、思いきりそっぽを向いた。たしかに屋台の男性を鼻白ませて話をそらすなら、それでもよかったか。そう思ったら、急速に首筋から頬に熱が集まってくるのを感じた。『結婚したばかり』のフレーズが頭の中を回る。
キトエと、結婚する。とても幸せなはずなのに、胸の痛みが同時にあった。
「このあたりでいいか?」