こっち向いてよ、佐久間くん。
「わかったから。そんなに騒いでるからその可愛い子が引いてるよ」


「引いてるって…私のことですか?!」


『可愛い子』が誰なのか分かっていなかった為、びっくりしてしまった。


春ヶ丘にはお世辞を言ってくれる人が存在するんだ…。小学校でも中学校でも、女の子で嘘でも可愛いって言ってくれる人はいなかったから、涙が出てきそうになる。


「君以外に誰がいるの!!入学式の開式5分前にトイレにいるのなんて、私達くらいだよ〜」


5分前…??


「え、5分前!!早く戻らないと!!!すみません、失礼します…!!!」


話の途中なのに失礼かなとは思ったけど、初日から目立つようなことはしたくない。


幸いお手洗いから講堂までは近くて、すぐに講堂に戻ることができた。


「………器の電源はお切りください。生徒のみなさま、保護者の方は席にお座りください。まもなく開式致します。」


アナウンスが流れる前に戻れてよかった。時間を教えてくれたあの子には感謝しないと…芽依ちゃんと、舞ちゃん…だったかな?
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