こっち向いてよ、佐久間くん。
式は進んでいくけれど、昨日の夜髪型に悩んで夜更かししたせいか、とっても眠い。


校長先生のお話も受験前は聞きたくて仕方なかったはずなのに、子守唄に変わっていく。


目は開けておかなきゃ!!そう思って、まっすぐ前を向いた私の眠気は一瞬で吹き飛び、心臓がありえないくらい速く動き始めた。


「新入生の言葉 1年A組 佐久間真」


「暖かな春の訪れとともに___」


声は入ってきても、話している内容は全く頭に入ってこない。


私は知り合いのいない高校を選んで入学したはず。春ヶ丘だって、隣の県で私の住んでいるところからは2時間もかかる。同じ中学校に通っていた人がいるわけない。


それに、私は受験前、たしかに先生に聞いたはず。この学校に通っている人で春ヶ丘高校を受ける人はいますか?って。


先生は笑って『そんな遠い高校、受ける人なんていないよ。安心して受けてきてね」と言ってくれたのに。
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