Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

「やっぱり好きだから」

自分のことではなく、仕事が好きだと言われているのに、“好き”という言葉にドキドキしてしまう。

「そう……ですか」

なんとかそれだけを言うと、私はそっと握られていた手をほどきリビング内を歩いた。

大きな窓の外にはテラス、その向こうには緑の美しい芝生にプールまである。

「菜々、そこの扉開けてみて」

隣に続く扉のようで、その引き戸をゆっくり開けると、目の前に美しい琉球畳の茶室があった。

この間、お茶の作法も完璧だった彼。

「菜々に、あそこに花を活けて欲しいんだけど、そのうちお願いしていい? そしてたまにお茶をたてて欲しい」

それぐらいもちろん問題ない。というより、私にはそれぐらいしかできないし、その時間だけが無になれる。

「はい」

そう答えると彼は私を手招きする。拒否する理由もないし、ようやく話し合いかとリビングに戻る。

しかし、彼はキッチンの中へと入っていく。
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