Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
そんな先生とアポが取れたと父から聞いたのは、数週間前。
父は新しいエリアの増築を考えているようで、それを全面的にプロデュースしてもらうと話していた。
今、話題の有名な彼が、うちの旅館を手掛けてくれれば、それは確かにすごい宣伝効果だ。
そして、さらにこの旅館の価値が上がり、はくがつく、そう父は口にしていた。
その時はもう決定事項のように話していた父を思い出す。
「今一番有名な向井先生だからですよ。もちろん報酬はお望みのままに」
いきなりお金の話をする父に、彼の芸術をそんな風に言うなんて。損得だけでしか動かない父らしい。
非難めいた思いがよぎるが、もちろん口にできるわけもない。
返事をしない彼に、父は雰囲気を変えようとしたのかパンと手を叩いた。