Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
「俺、パスタぐらいしかできないけどいい?」
「え? 謙太郎さんが作るんですか?」
家政婦が必要で結婚をするのなら、もちろん私が作るべきだと聞き返す。
「ん? 俺たちが食べるんだし、じゃあ一緒に作ってくれるなら味の保証があるかもな」
「一緒に?」
生まれてから何かを命じられることはあっても、何かを一緒にやろうと言われたことは数少ない。
「俺は、忙しくなると食べることを忘れることも多くて、終わった後にひとりで作れるのがこれだけだから」
そう言いながら、卵とパルメザンチーズでソースを作っていく。
「カルボナーラですか?」
「正解!」
嬉しそうに答えた彼に、つい私も笑ってしまう。
「菜々は生ハム切って。ベーコンはないから」
「はい」
そう答えたものの、謙太郎さんが出してきたのは生ハムの原木で「これですか?」と驚いてそれを見つめた。
「もらったんだけど、減らないんだよな……」
ぼやくように言う彼を見つつ、私は機を取り直してそれを薄く切っていく。