Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

とても良いもののようで、香りがとてもいい。

「菜々」

「はい?」

薄く切ったハムを手にした私に、パスタを茹でてていた謙太郎さんが口を開く。

「味見」

まさかそこに入れろということだろうか。右往左往する私を面白そうに見ながら、彼は私に近づいてくる。

「ほら、早く」

近づきすぎる距離に、私は慌ててハムを彼の口に入れる。

「うん、うまい。塩気はこれぐらいか」

そう言いながら、ソースの味を見ている彼に、私は啞然としつつもこんなやり取りが新鮮でつい笑顔になってしまう。

「菜々、うまいよ。ほら」

謙太郎さんは切り終わった生ハムを一枚とると、私の口に放り込む。

「おいしい」

「な」

そんなことをしながら料理を作り、初めて会ったとは思えないほど心地よい時間を過ごしている自分に気づく。
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