Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
決定権はない。そしてこれは政略結婚なのだから、私に了承を得る必要などない。
「菜々、少しずつ俺を知ってくれればいい。その時、どうしても無理だと思ったら離婚しよう。約束する」
私が無理というより、あなたがじゃないですか? どんな女性でも選べるでしょ?
そう思いながチラリと視線を彼に向ける。
たった数時間しかたっていないが、彼と一緒にいる時間は、今まで一番楽しかった。
あの家にいても、父も継母も異母妹も家族とは思えない。それならば……。
「私などでよければ。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。菜々」
その優しい笑みに、大切にされていると錯覚しそうになる。
そんな甘い期待はしない。彼が仕事に専念できるように、私はただ努力をするだけ。
そう思った。