Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
穏やかな時間 ウスベニアオイ
「じゃあ、とりあえず準備させるから」
食器ぐらい洗わせて欲しいとキッチンで片付けてきた私に、謙太郎さんはパソコンを操作しながら視線を向けた。
「準備ですか?」
「ああ、菜々、もう帰ってくるなとか言われたんじゃないか?」
その的確な発言に父の出かける前の言葉を思い出し、ギクッとしてしまう。
「それは……。でも、何も持ってきてませんし、結婚前にそんな一緒に住むなんて」
荷物などそれほどないが、それでも着替えなどもあるし、ましてやいきなり一緒に住むなどハードルが高すぎる。
「ああ、俺」
無言で皿を食器棚にしまっていた私の耳に、彼の声が聞こえてきた。明らかに私に話しているわけではないとわかり振り向いた。
「そう、この間の縁談の斎藤菜々子さんと結婚することにしたから」