Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

「大丈夫か」

立ち上がって私の背中をさすりに来た彼に、私は振り向き涙目で軽く睨みつける。

「本当に意地悪」

「菜々限定。仕事の俺は紳士だよ」

そんなことはもう知っている。クライアントと話す姿も、一心不乱に図面と向き合う姿も、これからその建物を使う人のことを考え抜いて設計する彼は、本当に真っすぐで素敵な人だと思う。

だからこそ、どうして私と結婚をしようと思ったのかわからない。

その後、彼は有言実行といわんばかりに、一緒に食器を洗い眠る準備をするように言う。

「じゃあ、先にお風呂入ってください。もう湧いてるはずです」

寝室にもシャワーはあるが、謙太郎さんの寝室には、大きな岩盤浴つきの半露天風呂がある。

これは謙太郎さんが仕事に煮詰まったり、疲れた時に入れるように自分のために作ったと聞いている。私はそれをいつでも使える様に準備していた。
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