Will you marry me? 〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜
そして私は……。
そんなことを自分に問いかける必要もないのは気づいていた。
――彼のことが好き
そのことはもう紛れもない事実だ。たぶん、彼にあったその日から、好意を持っていたし、それでなければ私が身体を重ねるはずがない。
あの日、初めて瑠菜に取られたくない。自分の物にしたい。そして今は、あの頃よりさらに彼のことが好きだし、ずっと一緒にいたいその思いが日に日に強くなる。
「美術館の仕事ももう少しでひと段落する。そうしたら、沙月亭の仕事も始めるな」
「え?」
私も彼の手に触れながら、そう聞き返す。
仕事を始めるということは、約束を守ってくれることで、それ自体は喜ばしいことだ。
しかし、もしかしたら、また瑠菜にも会い、結婚が終わりに近づくなんてことはないのだろうか。
「菜々が酷い扱いをされてきたこともわかってる。菜々が望まないならもちろん受けなくてもいいが」
私が戸惑った表情を浮かべたことに、謙太郎さんは勘違いをしたようで私の顔を覗き込む。
「いえ、そんなことないです。ありがとうございます」
瑠菜がそばにいると、みんなが私より瑠菜を選ぶ、そんな不安がよぎったなど言えない。