Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

それに、沙月亭は私にとっても大切な場所だ。たくさんの仲間がいて、待ってくれているたくさんのお客様がいる。

そして何より、私自身向井謙太郎建築の新しい、邸宅を見てみたい。

その気持ちに嘘はない。ただ私の醜い嫉妬心だけだ。

家政婦として、瑠菜より私を選んでくれたが、女を武器にできる瑠菜の方がいいのかもしれない。

私で彼は満足しているのだろうか? 

「菜々、誘ってるととるぞ。その瞳」

濡れた髪がやけに色気があって、首筋、鎖骨と細く見えるのに筋肉しつな彼の身体が目に入る。

「誘ってます」

素直にそう答えて、わざと彼に密着してゆっくりと自分から唇を重ねる。

「お前……」

何かを言い掛けた彼の言葉を、これからの不安をすべて隠すように、私は深く謙太郎さんに口づけた。


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