Will you marry me?  〜エリート建築士は策士な旦那様でした〜

「先生、ありがとうございます、菜々もよくやったな」

よくやった。本当に私を何だと思ってるのだろう。それにこんなセリフ謙太郎さんに失礼だ。

相変わらずの父に、私は憮然としてしまうが黙って無表情を貫いた。

「それでは、まずコンセプトを確認させてください」

会談などにも使われる広い会議室に、凛とした謙太郎さんの声が響く。

家にいる時とは違う、仕事をする冷徹ささえ感じる言葉で、父や他の役員の意見をまとめていく。

広い敷地を開拓した一角。東京ドームが数個は入るその場所に、今より最上級のヴィラを建築する。

高い天井、ラウンジはは三十人は座れる広さのテーブルとソファ。全面ガラス張りの高い窓は開閉式で、その前にはプールが広がる。今まで和が中心だった沙月亭だが、今回は完全にリゾートを意識した洋建築にしたいと父は考えているようだ。

もちろん、謙太郎さんの会社はリゾートやトリート施設などの案件も多く扱っており、得意な分野だとは思う。

でも、ここは代々続く和風旅館。老舗といわれ数々の著名人を迎えてきたのだ。
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