神様、僕に妹を下さい

Act.115 サイド晶(あきら)

この前は和食だったから、今日は洋食かな?
 皇兄はサバの味噌煮と揚げ出し豆腐の次は何が好きだっけ?
 ハンバーグ、パスタ、エビフライ・・どれも私の好物ばかり

 2人で鍋というのも捨てがたい
 鍋なら・・しゃぶしゃぶ、すき焼き、ヘルシーな鳥鍋なんかも・・
 問題は、私が作れるかどうかなんだけど

 「何だかうれしそうだね。晶ちゃん」
 私がほくそ笑んでいるのを見てか、狩野先輩がニッコリと笑った

 「今日は何を食べよ・・じゃなくて、ピアノもいいですけど、バイオリンもいいですね」

 私と狩野先輩は昼食をとったあと、バイオリンの演奏会に来ていた
 もちろんお母さんも一緒、それに・・狩野先輩のお母さんも来ていて、妙にうちのお母さんと話が合っている様子

 当の私は心ここにあらずで皇兄と一緒に食べる約束をした夕飯のメニューを考えていた

 演奏会は17時には終わるから、スーパーに行けるかな?
 無理なら、皇兄と一緒に買い物に行くのもいいかも

 『お前カワイイよ』
 皇兄は目を細めて、私の頭を撫でてくれた
 顔中痣だらけの私に向かって言ってくれた言葉

 狩野先輩は私の顔の痣には気が付いていない
 もし気付いたら、どう思うだろうか?

 「あ・・」
 狩野先輩と目が合ったが、何も言わず目線を逸らす
 気まずくはないけど、何を話していいかわからない

 「今日の髪型、可愛いね」
 私の気持ちを察してか、狩野先輩の方から話しかけてくれた

 「ほんとですか!これ、皇兄がアレンジしてくれたんですよ」
 言って、自分の声が弾んでいるのがわかる

 「え?桜庭君が!?」

 「皇兄って手先が器用なんです」

 「桜庭君と晶ちゃんて本当に仲がいいんだね。僕には兄弟がいないから、羨ましいよ」
 
 「仲がいいだなんて、そんな事ないです」
 そうか、他の人には仲がいい風に見えるんだ
 普通だと思うんだけど

 「この後、皇兄と夕飯を食べる約束もしてるんですよ」
 
 「まるで、恋人同士みたいだね」
 
 皇兄と私が恋人同士!?
 
 だって、生まれたときから皇兄は皇兄で、ただ他の人よりお互いの事を知っているかな・・好きな食べ物とか、服の好みとか、それは自然に身についたもの

 ある意味、恋人より近い存在・・なんて皇兄に言ったら
『バカだろ』って言われそう

 パチパチパチ
 気が付くと演奏が終わり、拍手の渦が巻き起こっていた
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