神様、僕に妹を下さい

Act.119 サイド晶(あきら)

 皇兄の急用って、沢村双葉と会う事だったんだ
 
 私、こんな植栽の影に隠れて何見ているんだろう

 「私、帰ります」
 こんな、覗き見みたいな事したくないし、2人の事もなんとなく見ていたくなかった

 「あかん、今出ていったら見つこうてしまう」
 後ろから、腰をかかえられ、植栽から出る事を止められてしまう

 「でも、私・・・」


 『私、こんなキスしてみたい。包み込むような、優しいキス』

 沢村双葉の甘い声が私の元に聞こえてきた
 もちろん、私に対してではなく、皇兄に言っているのだけれど

 キ・・キス?

 『いいから動画を消せ』

 その後、すぐに皇兄の声がする
 沢村双葉が携帯の画面を皇兄に見せているようだった

 『キスしてくれたら、消します』
 強い意志を込めた、沢村双葉の口調

 キス・・とか、動画を消せとか・・いったい・・?

 「双葉の携帯に何が写ってるんやろ?ここからやと見えへんな」
 会長さんが私の肩に手を乗せ、身を乗り出している

 その後すぐに
 皇兄は沢村双葉の左腕を掴み、携帯電話を取り上げた
 そして、その画面を見て驚いている様子だった

 『先輩が無理やり消そうとするから、こうしたんです』
 どうやら、皇兄が携帯を取上げる前に、沢村双葉が何かをしたみたい

 『今の画像、何処に送ったんだ!!』
 取上げた携帯のボタンを操作しながら、皇兄は彼女を睨んでいた

 
 「なんや双葉、画像を誰かに送った見たいやな」
 
 「ひゃっ」
 丁度、会長さんの胸ポケットが私の背中に当てって、ブルブルという振動が私に響渡った
 
 「会長さん、胸ポケットに何か動物飼ってます?動いているんですけど」

 「動物・・?ちゃう、スマホや。バイブにしとった」
 会長さんは携帯を胸ポケットから取り出し、ロックを解除し、画面を開く

 その間、腰に回された会長さんの腕が外され、私の身体が自由になった
 今のうちに、ここから・・逃げれそう

 少しずつ、座り位置をズレながら、離れようとする

 「携帯・・双葉からや・・」

 「えっ!?」

 しまった!思わず声をあげてしまった

 「どこ行くんや?もーも。それにしても、双葉の奴何を・・?」
 私は元の位置に戻され、会長さんは慣れた手つきでボタンを操作すると、携帯画面に画像が映し出された

 それは、昼間のこの公園だった
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