神様、僕に妹を下さい

Act.121 サイド晶(あきら)

 私は、勝手に皇兄の事を知っていると、思い込んでいたのかもしれない

 皇兄がタバコを吸う事も、たった今初めて知った

 タバ・・コ!!
 
 タバコを吸っている所を学校に言われたら皇兄、停学になってしまう

 そして、私と一緒にいる人は生徒会長だ

 「会長さん、あの・・その・・タバコの・・」

 「こーちゃんのタバコの事は内緒な、もも、口堅いやろ」
 
 「はい」
 よかった。私が言いたかった事をこの人から言ってくれた

 会長さんは地面にへたれこんでいる私の脇を掴み、立ち上がらせた

 「明るいとこ、行こか」

 「え?でも」

 皇兄の方を見ると、帰ったみたいで2人の姿はなかった
 
 会長さんと電灯下のベンチまで行くと、私たちは腰掛けた

 「はぁ」
 2人同時に溜息をついて、顔を見合わせた

 「双葉の奴、報われん恋しとるなぁ。こーちゃんに『生徒会予算の件、毎日やり遂げたら、心のこもったキスをください』言うて走り去って行きよった。健気な奴や。こーちゃんにあんな幸せそうな顔をさせる彼女がおるっちゅうに」

 「そう・・です・・ね」

 さっきから、蕁麻疹が熱いのと、背中の鳥肌が治まらない
 
 「もも?どないしたんや?」

 「いえ、その」
 なんでだろう。皇兄のキスシーンが頭から離れない
 身体中の熱が上昇しているようだ

 「もも、キスした事ないやろ。だからこーちゃんのキスシーンに触発されてしもた」

 「な・・!」
 
 「言わんでもええ。顔が物語っとるわ」
 
 顔が語ってる!?両手で顔を押えた

 会長さんの言うとおり、キスの経験はない
 経験がないから、皇兄のキスシーンが目に焼きついて離れないのだろうか?

 「あの・・その、携帯の画像どうするつもりですか?」

 「気になるん?さーてどうしたもんか」

 「消して・・消してあげて下さい」
 私だったら、好きな人とのキスシーンを写されているのは嫌だ
 ましてや、それを他の人に見られるのは・・

 「うーん。勝手に消したら双葉に怒られるしな」

 「お願いします」
 ベンチから立上がり、頭を下げる

 「何でももが頭を下げるん?ももには関係ないことやろ?」

 「それは・・その、」
 うまく会長さんを納得させる理由が思い浮かばない

 どうしよう・・どうすれば・・・

 「なーんや。困っている『もも』も いいなぁ」

 ん~と両腕を背伸びしながら、会長さんは目を細める

 「じゃぁ理由は聞かんから、俺からの条件を出してもええか?」

 「私に出来ることであれば・・」

  「なら、消す替わりに、ももから俺にキスして」

 「えっ!?」
 顔を上げると、会長さんは携帯を片手に両手を広げていた

 「俺もこーちゃんに触発されてしもたんやけど、出来るん?」
 
 私はゆっくりと、会長さんに向かって歩き始めた
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