神様、僕に妹を下さい

Act.122 サイド皇紀(こうき)

 思ったより帰る時間が遅くなってしまった
 晶との約束の時間より、2時間遅れて家に着いた

 「ただいま」
 
 「あら、おかふぇりなしゃい」
 リビングに入ると、発音の悪い母さんの声が返ってきた
 母さんの口の中には、しっかりオレの作ったグラタンが入っていた

 「皇ちゃん、これとっても美味しいわ」

 「そりゃ、どーも」
 ・・・ておい。オレは晶の為に作ったんだが、何でこの人が食べているんだか
 肝心の晶は食べてくれたのか?リビングには晶の姿がなかった

 「あら、晶ちゃんは何処?」
 
 「は?」

 おかしな質問にオレは首をかしげた

 「晶・・て、母さんと一緒に出かけただろ」

 晶の座るテーブルには、出かけた時に持っていったはずのポーチが置いてあった

 「出掛けた時は一緒だったけど、帰りは別よ。あの子、皇ちゃんと夕飯食べるからって、先に帰ったわ。晶ちゃんとは何を食べてきたの?」

 「・・・」

 母さんの質問を無視して、玄関に晶の靴がない事を確認する

 「あいつ、1回帰ってきて、また出掛けたのか?」

 でも何処に?こんな夜になって、まだ帰ってこないなんて、何かあったのか?

 居ても経ってもいられず、家を出て街に向かって歩き出す

 直感とでもいうのだろうか。なんとなく晶はこの方向にいるような気がした
 
 しばらく歩いていくと、うつむきながら歩いてくる晶の姿を発見し、兄妹の勘にしばし感謝した

 元気はなさそうだが、出掛けた時と変わらない姿でよかった

 ピンク色のワンピースに身をつつんだ晶の姿は、暗闇の中でも綺麗だと思わず立ち止まってしまう

 晶は、目の前のオレの存在にまったく気付かず、『ごつん』と頭がオレの身体にぶち当たって、ゆっくり顔をあげた

 「あ・・」
 晶は小さく声をあげると、オレから1歩後ずさりした

 「何処に行ってた?心配していたんだ」

 「・・ごめんなさい」
 首筋に手を当て、目線が定まっていない様子

 「謝るのはオレの方だ。夕飯一緒に出来なくて悪かったな。母さんも心配してるから、帰ろう」
 手を握ろうとした時、晶は素早く身を引いた

 「あき・・ら?」
 
 何だ?うまく言えないが、晶の様子がおかしい
 
 どこか、オレに怯えているそんな気がした
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