神様、僕に妹を下さい

Act.123 サイド皇紀(こうき)

 「私、1人で帰れるから」
 晶はそう言い放つと、オレの前を勢い良く歩き出したはいいが、すぐによろめいて、電信柱にぶつかった

 「大丈夫か!?」

 地面に尻餅をついた晶を起こそうと駆け寄ると『触らないで』と強く撥ね付けられた

 オレは、訳もわからず立ち尽くす

 晶に拒絶されるのは、オレから何かを仕掛けた時以外、初めてだったからだ

 夕飯の約束を破ったからか?思い当たるのはそれしか考えられないのだが・・

 「何か、あったの?オレが原因?」
 柔らかく言いながら、しゃがみ込むと晶の顔を覗き込んだ

 「や・・見ないで、私、おかしいの」

 一瞬オレの腕を掴もうと細い腕が伸びてきたが、躊躇され引っ込められた

 「おかしいって、顔の痣の事か?それなら全然ー」

 「違うの。私知らなくて、見るつもりなかったのに目が離せなくて、そしたら頭の中から消えなくて、皇兄の事・・」
 潤んだ眼差しでオレを見る目は、戸惑いを隠せない様子だった

 そして、晶の腕に、鎖骨にぽつん、ぽつんと赤い斑点が浮き出ていた

 「おまえ、蕁麻疹が・・」
 晶は興奮に達すると、血が彷彿し身体に蕁麻疹が現れる。大抵の原因は怒りが発端となっていた

 しかもいつもは鎖骨より上の身体にしか現れないのに、腕にまで及んできている
 
 「はぁ、だめだ。治まんない。さっきより酷くなってる」
 晶は腕の蕁麻疹を手で覆いながら、ヨロヨロと立上がった

 
 知らなかったとか、見るつもりはなかったとか、頭から消えないとか、さっき言った晶の言葉は、いくら考えても意味不明だった

 でも、晶自身は蕁麻疹の原因が分かっている様子

 「オレの事って何?」

 「え?」

 「さっき、オレの事で言葉が止まっただろ」
 ただ、その原因にオレが何だかの形で関わっているのは確かだ

 「・・言えない。聞いたらきっと皇兄、私のこと・・避けるよ」

 「そんなの、聞いてみないと分からないだろ」

 何を言わんとしている晶?
 
 「いや、言い方が悪いな。何を聞いても、オレはお前を避けないよ」

 何を言われても、避けるなんてしない

 お前の事、こんなに好きなのに

 「皇兄・・」
 オレの胸の中に晶がやわらかく倒れこんできた

 オレはそっと晶の身体を抱きしめようと手をかけた
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