神様、僕に妹を下さい

Act.124 サイド晶(あきら)

「今日は寒いね」
 私の横を通り過ぎるカップルが、肌をさすりながら腕を組んで歩いていく

 季節は春の終わり。梅雨がもうすぐ到来するせいなのか肌寒かったけれど、私には丁度良い寒さだった

 この外気の気温によって、私の皮膚に出没している蕁麻疹を早く消し去りたかった

 「はぁ」
 これで何度目の溜息なの?溜息をついた分、幸せが逃げちゃうって聞いた事があるけど、私の幸せ一生分消えていくんじゃないかって思うくらい

 とぼとぼと歩きながら、確実に家に近付いている
 皇兄に・・兄と顔を合わせたら、私はどんな表情になっているんだろう?

 皇兄のキスシーンが頭から離れな・・『ごつん』
 うつむきながら歩いていたせいで、柔らかい壁にぶつかって私の足取りはそこで止まり、顔を上げた

 「あ・・」
 うそ、皇兄!。やわらかい壁は、皇兄の胸の中
 ビクッと身体が反応して、1歩後ろに後ずさりしてしまう

 なんで、皇兄がここに・・?

 「何処に行っていた?心配していたんだ」
 心配?皇兄の安堵の声を聞いて、さっき21時を過ぎていた事に気付いた

 「・・ごめんなさい」
 視線を落とし小さく言うと、ドクドクうずく首筋に手を当てた
 
 身体の熱が2度上昇したような・・気がする

 「謝るのはオレのほうだ。夕飯一緒に出来なくて悪かったな。母さんも心配してるから、帰ろう」

 皇兄の手が私の手に触れ、その部分から電流のように熱が身体に走り身構えてしまう

 「あき・・ら?」
 明らかに皇兄の声は、私の様子がおかしい事に気付いている

 身体が・・熱い

 「私、1人で帰れるから」

 自分の感覚がおかしくなりそうで、早くこの場から立ち去りたい一心でそう言うと、皇兄の前を歩き出した
 ・・はいいが、すぐに足がもつれて電信柱に額からぶつかってしまい、地面に尻餅をついてしまった

 「大丈夫か!?」
 当然のように私を抱き起こそうと、後ろから皇兄が走ってくる

 やめて・・これ以上私に・・・

 「触らないで」
 私の言い放った言葉に、皇兄が固まっていた

 酷い事言っているのは分かっている。でも今、皇兄に触れられたら、せっかく引いてきた蕁麻疹が出てきてしまう

 「何か、あったの?オレが原因?」
 皇兄は私の視線にしゃがみ込むと、優しく首をかしげた
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