神様、僕に妹を下さい

Act.126 サイド晶(あきら)

 皇兄に私の気持ちを・・うまく伝えられるだろうか?

 「あのね・・」
 大きく息を吸い込んだ時、皇兄のシャツからミント系のコロンに混じって、タバコの匂いが漂ってきた

 ギュッ
 私は皇兄のシャツを握り締め、顔を上げる

 タバコの香りと共に、公園での皇兄の無表情で、暗くて、冷たい声を思い出した

 あれは、キスシーンを勝手に覗いて、携帯画像に写した沢村双葉に対してのものだった

 けど私だって、沢村双葉と同じ事している・・

 あの冷たい声が私にも向けられる

 「晶?」

 「ごめ・・ごめんなさい。ごめんなさい」

 言えない。やっぱり言えない

 「何を謝っているんだ?晶」

 「ごめんね。ごめ・・」

 「だから、何に対して謝っているのか分からないだろ」
 皇兄が私の肩に両手をかけた

 私は、両目から熱い雫が頬を伝わり、地面に落ちていくのを感じながら、公園で会長さんに条件を出された時の事を思い出していた





 
 『なら消す替わりに、ももから俺にキスして』
 皇兄のキスシーンの画像を消す為に会長さんから出された条件だった

 『出来るん?』
 ベンチに腰掛け、両手を広げる会長さんに向かってゆっくり歩き出す

 歩幅で数歩の距離が、とても長くて前に進まない

 『おいで』
 一向に進まない私に、痺れをきらした会長さんは、私の手繰り寄せ自分の膝の上に座らせた

 『俺の首に腕を回して』
 
 『は・・い』
 震える身体で言われた通り腕を回すと、丁度会長さんの顔の位置が私の胸の高さになっていた

 『ほんまに言う事聞くんやなぁ。こんなに震えているのに。もも、キス初めてなんやろ』
 返事の変わりに目を閉じる

 『ほら、小さい胸もこんなに脈打ってるやん』
 ぱふっと会長さんの頬が私の(小さい?)左胸にうずくまった

 『や・・』
 
 『クス。カワイイ声で鳴くのな』
 会長さんは胸から顔を上げると、右腕を私の首に回した

 『ほら、ちゃんと目を開けないと、俺の唇の位置が分からない』
 会長さんの言葉の端から、関西弁が消えた

 私は薄っすら目を開ける

 『俺から止める気はないから、よく考えて』
 会長さんの滑らかな指先が私の唇をなぞった

 『ももは初めてのキス、誰としたいのか』

 私のファーストキス

 『瞳を閉じて、瞼に浮かぶ顔は・・誰?』
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