神様、僕に妹を下さい

Act.127 サイド晶(あきら)

 目を閉じて、瞼に浮かぶ人

 「晶、おい晶!」
 皇兄の指先が私の涙を拭っている

 「こ・・うにぃ」
 瞼に浮かんだ人は、初恋の人でもなく、アイドルや俳優でもなかった
 
 私の目の前にいる兄だった

 感情の位置が不安定で自分でも分からない。けれど、ファーストキスの相手は皇兄でありたいと・・

 だから、会長さんとは出来なかった。同時に画像を消去してもらう事も出来なかった

 自分の邪な考えの為に、こんな・・

 「ごめんなさい。皇兄・・ダメな・・ダメな妹でごめんね」

 いつも、皇兄に守られているのに、私は皇兄になにもしてあげられない

 「話せ。何があった?」

 「何も・・ないよ」

 「嘘をつくな」

 「嘘じゃないよ」

 「じゃぁ、何で泣いている?何で謝る?」
 
 肩を掴んでいる皇兄の腕から少しずつ逃れて行く

 「お・・女の子には色々とあって、涙腺が弱くなる時期なの。ほんとにダメな妹だよね。皇兄も、もう私の事なんかより、彼女の事、大事にしてあげないと・・」

 今の私、ちゃんと笑えてるの?

 「は?何、理由(わけ)の分からない事を言ってんだ!いい加減にしないと怒るぞ」

 「もう、私の事はほっといてって事。お母さんの言うとおりだね。私が何時までもしっかりしないから、皇兄に心配ばかりかける。でも、もう大丈夫、もう見守ってくれなくていいから」

 皇兄・・覚えてる?
 私が11歳の時に言ってくれた言葉

 『お前の傍にいる限りは、見守ってやるよ』

 でも、いいから。もうこんな妹、見守ってくれなくていいから

 
 私は、走った。足に限界が来るまで走りぬいた

 後ろから、皇兄が追ってくる事はなかった

 これで・・いい。これでいいの

 皇兄とキスしたいなんて考え、早く何処かにやってしまわないと


 家に着いて、脱衣所でワンピースを脱いだ

 下着だけの姿が鏡に映る

 蕁麻疹は私の身体全身に転移していた。頭の中では考えてはいけないと分かっているのに、身体は正直に反応している。身体は嘘をつかない

 「うっ。うっ」
 壁によりかかりながら、ズルズルと床に座り込む

 身体中が熱を浴びて、かゆみを引き起こしていた

 これは、罰

 愚かな事を考えた、私への神様が下した罰だ
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