神様、僕に妹を下さい

Act.132 サイド皇紀(こうき)

 「何、子供じみた事しているんですか?」
 生徒会室の窓から、ティッシュをちぎって外に飛ばしている会長に、溜息交じりに問いかけると、大きな溜息となって返ってきた

 「ほっといてんか。俺、今ブルーやねん」
 それは見ていても十分わかる。後姿がそれを物語っていた

 俺も好きで話かけているのではない
 はっきり言って、オレの方も人の心配をしている余裕がないくらいだ

 「何かあったんですか?言いたくなければ言わなくてもいいですが」
 取り合えず形式的な言葉を投げかけ、会長の側からティッシュの箱を遠ざけた

 「俺・・『もも』に酷い事してしもたんや」
 ほおっておいて、と言っていたわりに、あっさり悩みを切り出してきた
 
 『もも』って会長が飼っているという、ハムスターのことだろ

 「餌でもやり忘れたんですか?」
 
 何でオレが、会長のペットの悩みを聞く羽目になるんだ?
 もっと、別の事で悩めって。せめて相手は人間で

 「ちゃうわ。『もも』は背がちぃそうて、目がくりっとしてて、胸も・・ゴホンッまぁ、あるほうではないけれどれっきとした女の子や」

 「はぁ、それは失礼」
 ハムスターだろうが、人間だろうが、俺にはどっちでもいい話なんだが・・

 「なんでや、なんで『もも』は、あんな事までしようとして、こーちゃんの画像を消そうと・・」

 「?」
 ぶつぶつと独り言を呟きながら、会長は親指と人差し指を顎に当てた

 「まさか・・口に出しとうないけど、『もも』は・・こーちゃんが・・好きなんやろか?」

 オレは理由(わけ)もわからず、鋭い目つきで睨まれた

 「それしか、思い当たらん。あの画像の為に『もも』は・・」
 
 そして、今度は目頭を押さえて泣き出しそうになっている


 会長は完全に独りの世界に入ってしまっている
 オレは新條先輩の顔を見て、お手上げだと肩をすくめて見せた

 ふわりと今日は心地よいそよ風が外から吹いてくる
 この分だと、会長が落としたティッシュも散らばっている事だろう

 仕方がない、後で拾いにいくしかないか

 「会長下に」

 『わぁ、きれい』
 
 「!」
 高いソプラノの声に、パチパチと拍手が窓の下から聞こえてきた

 この声・・晶だ

 窓の外には、降ってくるティッシュの雨を見上げている晶がいた
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