神様、僕に妹を下さい

Act.143 サイド皇紀(こうき)

 「何、2人で親密そうなお話してるんですか?」
 トレーにコーヒーを乗せ、沢村双葉が会長との間に割り込んできた

 会長には乱雑にカップを置き、オレの方にはコースターを敷いたカップ、その横にマフィンを乗せた皿を置いた

 「どうぞ。皇紀先輩」

 この、貧富の差に思わず苦笑い

 「なんや、この差は双葉!!どーゆー事やねん。俺だってマフィン食いたい」

 マフィンの皿に伸ばした会長の手を、パチンと良い音を立てて、沢村双葉が撥ね付けた

 「これは、皇紀先輩の為に準備したの。オニイチャンはあくまでも、ついでなの」

 「なんやてーお前、兄ちゃんに向かって、なんやその口の聞き方は!」

 2人のやり取りを見ながら、コーヒーを飲む

 オレにとっては『こんな女』でも、会長にとってはカワイイ『妹』なのだ
 会長は兄として、妹の成長の為にちゃんと考えている

 じゃぁ、オレは?
 オレの感情は、晶にとって成長の妨げにしかならない
 晶の事を考えるなら、五十嵐の言う通り、離れていこうとしている晶にオレから近づかないほうがいい

 あいつの、未来の成長の為にも

 「マフィンもろてええか?」

 「どうぞ。俺は甘い物は食べませんから」
 ・・て返事の前に、マフィンの原型は消えていた

 ついでに、沢村双葉の姿もない

 「双葉なら、先に帰した。文句言っとたけど、『生徒会室出入り禁止にしたる』って脅しかけたら、一発やったわ」
 ほぐほぐとマフィンをたいらげた後、おずおずと携帯電話がオレの前に出された

 「何ですか?」

 「双葉がおると、この話できんから」

 携帯画面を開くと、見覚えのある映像が流れ始めた
 
 これは、沢村双葉に隠し撮りされた、キスシーン
 沢村双葉の携帯から削除する前に、誰かの携帯に転送されたらしいが、会長の携帯にだったのか


 「ほんま、堪忍な」

 「オレの方は削除さえしてくれれば、それで。でも・・」

 会長の顔をマジマジと見つめる

 「なんや?」

 「いや、よく正直に話してくれたと思って」
 てっきり、これと引き換えに、無理な条件を出してくると思った
 
 「礼やったら、この画像を消してほしいと頭をさげた『もも』に言ったって」
 
 も・も?なぜそこに、ハムスターの名前が出てくるのだろう?
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