神様、僕に妹を下さい

Act.144 サイド皇紀(こうき)

 「この動画と『もも』との関連性が掴めないのですが・・・?」

 「こーちゃんには関係なくても、『もも』には関係大有りなんや。あの子は・・」

 『はぁ』とため息と共に、会長は口元に手を当て、オレに目線を合わせようとせず、頬が赤く染まっている

 この反応・・

 「会長、その子の事好きなんですか?」

 「うっ・・なんでわかった?」
 
 なんでって、その子の話になった途端、かすかに目がうるんで、肩に力もはっているし、火照ったその表情

 解からない方がおかしいだろ

 「『もも』の瞳をみるとな、こう鼓動が激しくなって、息苦しいちゅうかなんというか、身体全体が熱く血が沸騰しとるような気分になるんや」

 完全に『もも』という子に恋している会長を見て、少し昔の自分を思い出した


 オレも、あいつに関わるすべての存在を感じたとき、針でちくちくと心臓を刺される様な苦しさと、奴隷という烙印を押された様な熱さに蝕まれた

 相手が『妹』だという意識も、影響していてのことだろう

 そんな、火照ったオレの表情を見て、『熱でもあるの?』と言いながら、晶はオレを心配そうに覗きこむ

 晶に見つめられると、雷を打たれたような電流が走り、後に熱を持って治まることはなかった


 「その子に気持ち、伝えたんですか?」

 オレは伝える事は出来なかったけれど

 「伝えた」

 そう、よかった


 「けど、『もも』はこーちゃんの事を好いとるんやと思う。自分自身気付いてないよって、明日にでもこーちゃんに確かめに行くはずや」

 だから、『誰に対しても真剣に返事してほしい』・・と
 
 「せやから・・その・・こーちゃんには」

 「断わるにしても、真剣に返事をですね」

 「まぁ・・こんな事頼むことやないと思うけど、あの子は双葉より繊細やから」

 恋は人を変えると言うが・・これは・・
 こんな会長を見るのも悪くない

 「『もも』って本名なんですか?」
 
 「え・・?」

 「名前を知らないと、確認できないでしょう」

 「あ・・それが本名を聞くタイミングなくて知らんのや。でも、特徴なら」

 「それなら、前に聞きました。背が小さく、目がクリッとして、胸はない方だと」

 それだけで、『もも』だと判断しろという方が無謀だろう
 
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