神様、僕に妹を下さい

Act.145 サイド皇紀(こうき)

パフッ

 学校から帰った後、鞄を椅子に放り投げ、なだれ込むようにベットに倒れこんだ

 「疲れた」

 静寂で暗闇の部屋の中、唯一光を放っているのは、腕時計の時刻を示す針の先

 オレが高校入学の時に、買ってもらった晶と文字盤が色違いの腕時計

 オレの文字盤が白、晶の文字盤が薄紫の仕様になっている

 ・・だが、今オレがしているのは、薄紫の文字盤、そう晶の腕時計をオレは着けていた

 晶と一緒に時を刻んできた時計がほしくて、あいつに内緒で交換した

 いまだ、晶から何も言ってこないから、交換した事に気がついていないのだろう

 鈍いやつ


 鈍いと言えば、会長が恋している『もも』という女も相当、鈍い様だ

 どうやら、明日以降にオレの所に来るらしいのだが、『もも』の顔を知らないオレが名前を聞くと、当の会長も知らないらしく、特徴を並べ立てられた

 茶髪で、背が小さくて、瞳がクリッとしてて、胸が小さい・・と

 それだけで、『もも』を判断させるな!と会長に言ったところ、最後にとんでもない特徴を言い出した


 『『もも』の後ろ首筋には、俺がつけたキスマークが2つ縦に並んでるはずや。つい、寝顔がカワイイて付けてしもた』

 恥じらいながら、オレの肩に『の』の字を描く、会長

 付ける方も付ける方だが、付けられて気付かない方も、相当鈍い

 『もも』だと、疑わしき女が来る度に、うなじを見せてくれと、オレから確認をしなければならないのか・・・

 「出来るか。そんな事」

 ベットに横になりながら、器用に上着と、Yシャツを脱いで床に放り投げた
 ズボンは・・まぁ、皺になるのは解かり切っていたが、脱ぐ気力がなく、そのまま休む事にした

 時計を腕から外し、右掌に持ち直し、肘枕をする

 眠れない

 もうずっと眠れていない

 眠れたと思っても、眠りが浅いせいか気が付くと、すでに朝になっている

 
 だから、この腕時計はオレにとっては、必需品

 こうして、時計の秒針の音に耳を傾けると、自然に心が癒され、眠りに落ちるのも速くなる

 そして、最近もうひとつ手放せないのが、水色のパスケースに入れた晶の写真。枕の下に隠している


 カチッ・カチッ・カチッ

 睡魔という悪魔・・がそろそろオレに近付いてきた
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