神様、僕に妹を下さい

Act.148 サイド晶(あきら)

皇兄の顔(寝顔)に見とれて、5分は過ぎたと思う

 自分の心臓に、身体に問いただすが、症状は何も現れていなかった

 「ほぅ・・」
 解かり切っていた事だけど、なぜか安堵感のため息が漏れた

 それにしても、さっきから気になっているのが、皇兄の右掌

 しっかり、何かを握っている様子

 キラキラ光っているから、金属製のものだと思うんだけど・・

 なんだろう?すごく大事そうな物に見える

 ツン、ツン

 人差し指で、皇兄の右指の間をつついてみた
 すると、くすぐったく感じたのか指の力が緩まって、スルッと金属の塊りが掌から枕に落ちていく

 「ぁ・・」

 かろうじて、落ちる前にキャッチに成功

 あれ?でも、この感触・重さを、私は知っている

 そっと立上がり、窓際に移動すると、その腕時計を外の街灯にかざした

 「やっぱり・・」
 思った通り、丁度私もはめているから、間違いない。私と色違いの腕時計だ

 でも、どうして腕時計なんかを・・?
手首から外して握ったまま寝ちゃったのかな?


 文字盤が薄紫色の腕時計

 なんだろう・・古い記憶が蘇る

 時計を選ぶ時、すでに決めた皇兄が、なかなか選ぶ事が出来ない私に言った


   『晶は、このすみれ色にしろよ』


 黒、赤、空色、薄緑、薄紫の5色から、皇兄は薄紫の時計を指差した

 もともと空色か、薄紫かのどちらかで迷っていた私は、このひと言でそれに決めた
 
 ・・・はず、だったよ・・ね?
 でも、今私がはめているのは、白の文字盤のもの

 
  『なぁ、すみれの花言葉知ってるか?』


 時計のラッピングを待っていると、隣で皇兄が聞いて来た

 当然、私は知らなくて、答えを教えてもらおうとしたら、ラッピングが終わって、結局そのまま・・聞かずじまいで


 「すみれ色・・すみれの花言葉・・?」

 薄紫・・すみれ色の腕時計。もう一度、街灯の光の元に持ち上げる

 
 「返せ!」

 「!!」

 低い声が後ろから響き、振り返ると皇兄が立っていた

 腕時計に夢中になっていて、皇兄が起きた事に気が付かなかった!!

 「こっ・・」

 「返せよ!」

 「痛っ」

 引きちぎられるかと思うくらい強い力で、腕時計を持つ私の腕を皇兄は掴んだ

 「頼む。返してくれ」

 皇兄の目は私を見ていなかった
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