神様、僕に妹を下さい

Act.150 サイド晶(あきら)

皇兄に立たせられた後、私達はしばらく無言だった

 掴まれた腕から、皇兄の熱と鼓動が皮膚を通じて、私に伝わってくる

 トクン・トクン・トクン 皇兄の心臓の音

 ドクン・ドクン・ドクン  私の心臓の音

 二つの心臓の音が、私の鎖骨の下の『心』に重なった

 「私・・」
 ゆっくりと顔をあげ、街灯の光に照らされた皇兄の顔を見つめた

 
 『頭で考えるんやのうて、心に問いて、感じた事を素直に言葉にしてみるんや』

 会長さんの言葉に、鎖骨下に手を当てる

 心に問う・・素直に言葉に・・

 
 す・・き  

 私は・・皇兄が好き


   「私・・、皇兄が好きです」


 言葉が自然に出ていた
 
 これが、恋なのだとか、兄妹だとか本当に今は関係なかった

 
 「は?・・お前何言ってんの?」
 皇兄の目元がピクッと引きつり、眼球が鋭く光った

 そして、皇兄の両手の指が私の首筋を軽く掴み、私の顔より下を見据えている


 「こんな・・オレを拒否する蕁麻疹を見せ付けられて、オレが平気だとでも思ってんの?いい加減、オレの心を弄ぶのはやめてくれ。オレがいったいどんな気持ちで・・・」

 スーと首筋から皇兄の手が、引力に吸い込まれるかのように、落ちていく

 「もう、頼むからオレに近付くな」
 重く、静かにはっきりと、夜の中で言葉が響いた


 「こう・・にぃ」
 片手で首筋の蕁麻疹を押さえ、もう一方の手で皇兄のシャツを掴んだ

 どうしよう、私・・なんて伝えればいいの

 「好き」
 他に言葉が思いつかない


 「触るな」

 パシッと私の手が撥ね付けられた
 

「オレは、お前なんか大嫌いだ。顔も見たくない」

 
 上から、感情のない声が浴びせられ、私の手がパタンと落ちた

 
 「ごめ・・んなさい」

 不思議と、涙は出てこなかった

 本当に、悲しい時は涙なんて、出ないのかもしれない

 
 ただ・・私の不可解な態度と、身体の蕁麻疹が、皇兄を傷つけた
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