神様、僕に妹を下さい

Act.151 サイド皇紀(こうき)

柔らかい日差しが、木々の間から差し込んでいる

 公園のベンチの端に腰掛けながら、オレは本を手に取った

 いつもは足を組んでいるのだが、今日は組めない理由がオレの膝の上にある

 「ふにゃっ」

 寝返りを打つの、これで何度目だ?晶

 おいおい、よだれだけは勘弁してくれよ。晶の唇の端にキラリ光る物を見つけ、親指でそれをすくい取ると、自分の口元に持っていった

 「///」
 自分自身の行動に、思わず赤面してしまう

 トクン・トクン・トクン

 何も知らない晶の心音が、膝を伝ってオレの中に流れてくる

 限りなく心地いい

 しいて言わせてもらうなら、膝枕って普通、男がしてもらうもんだよな

 なんで、オレ達逆なんだ?

 「ま・・いいか」

 オレは、お前がいればそれでいい

 トクン・トクン・トクン

 カチッ・カチッ・カチッ

 腕時計の秒針の音は、晶の心音に良く似ていた




 ない

 秒針の音を聞きながら眠りについたはずだったのに、手の中に腕時計がない

 音を感じなくなりオレは、不安で目を覚ました

 時計の音を聞いて眠ると、不思議と幸せな夢を見れる

 今の、膝枕も夢のひとつ

 「どこに行った」

 掌から落ちたのだから、枕の付近にあるはずだ

 手探りで、辺りを探すが見つからない

 なんで、見つからない?あれがないと・・オレは・・

 ベットから上半身を起こすと、枕を持ち上げシーツの皺を伸ばしながら探すが見つからなかった

 「!」
 そんな、オレの視野の中にキラリと一点の光が入ってきた
 光の方向に顔をもたげると、腕時計が、窓硝子から入る街灯の光の方向に浮かんでいた

 なんで、あんな所に・・・それも腕時計の本当の持ち主、晶が手にしていた

 夢・・夢の続きか・・?

 晶が、ここにいるはずがない

 蕁麻疹を出しながら、オレを避けるあいつが・・こんな夜に一人で、オレの部屋に来ているはずがない

 来ているとしたら、晶から離れようと決心したオレの心を惑わそうとする、晶の姿を被った小悪魔だ

 なんで・・晶の姿で、オレから時計までも奪おうとする

 「返せ!」
 スクッとたちあがり、腕時計を持つ晶の腕を掴んだ

 「こ・・」

 オレの姿に驚き、振り返る表情は本当に晶そっくりで、狂いそうになる
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