神様、僕に妹を下さい

Act.154 サイド皇紀(こうき)

 「母さん、オレの部屋の窓ガラスが割れたから、直すの手配しといて」

 「え?皇ちゃん・・お砂糖入れてるわよ」

 母さんが反応したのは、窓ガラスを割った事実ではなく、オレがコーヒーに砂糖を入れていた事だったらしい

 「あぁ、たまにもいいだろ。砂糖ぐらいで驚くなよ」

 コーヒーはいつもブラック
 しかも濃口好みのオレが、アメリカンで砂糖を入れているのがよっぽとおかしな光景に見えたのだろう。母さんはオレが、砂糖入りのコーヒーを飲むまで目線を外さなかった

 「甘っ」
 口の中に甘さが広がり、顔をしかめる
 コーヒーと言うより、砂糖水を飲んでいる気分だ

 「ふふっ。慣れない事するからよ」
 オレの当然の反応に、母さんは勝ち誇っている

 「そんな甘いコーヒー飲むの、晶ちゃんぐらいよ。あの子ならそれにまだ砂糖を入れて、ミルクもたっぷり入れるわね」

 晶という名前に、ビクッとオレの瞼が引きつった

 「窓ガラス、頼むよ」
 コーヒーを一気に飲みほし、口の中の甘さを消す為に、バターロールに手をつける

 「皇ちゃん、晶ちゃんとケンカでもしたの?」

 「なんで?」

 「夜遅く、お庭の方から皇ちゃんの怒鳴り声がした様な気がしたから」

 言いにくい事を、さらりと聞いてくるのはさすが母親

 「まさか、いい年して、今更兄妹ケンカなんかするわけないだろ。第一、言葉でも、力でも、オレが勝つに決まってるし。なんなら、晶にも聞いてみれば?」

 バターロールを千切りながら、リビングの入口に立っている晶に視線を送った

 「おはよう。晶」
 ニッコリ笑って声をかけると、パンを口に運んだ

 「おっおはよう。皇兄、お母さん」
 うわずった声が、困惑を隠しきれないでいるのがわかる

 「おはよう、晶ちゃん。今日は珍しく早いわね。何飲む?」

 「じゃぁ、レモン水を」

 晶は椅子の背もたれに、リュックをかけると、静かに腰掛けた

 晶の目・・瞼は重そうだが、泣きはらした後ではないようだ 

 「晶、母さんがオレとお前が、ケンカしたんじゃないかって疑ってんだけど」

 「え!?」 
 晶は不安そうにオレを見た後、母さんの方に目をやった

 何て答える?晶

 オレがお前に浴びせた言葉、母さんに言うか?

 それならそれで、オレはかまわないぜ
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