神様、僕に妹を下さい

Act.163 サイド皇紀(こうき)

 「いやぁ、天下の副会長さんに風紀委員を快く引き受けてもらえるなんて、俺って幸せ?」

 「・・・」
 オレは限りなく不幸せだよ

 引き受けないと、泊めさせないというオーラをヒシヒシと出しといて、よく言う

 「お前、ついてないと言っているわりに、嬉しそうに見えるが・・」

 五十嵐の表情はまるで、遠足前日を控えている子供の様だ
 
 「だって、その通りだもん。風紀委員の特権と言えば、何の理由も付けずに、女の子に触れるんだぜ。スカートの丈がとか言ってさり気なーく太ももをさぁ」

 誰なんだ!こいつを風紀委員にしたのは!!
 
 「お前、まさか・・そんな理由で風紀委員になったんじゃないよな」

 頼む。せめて違うと言ってくれ

 「そうだよ。でなきゃ、好き好んで風紀委員なんかやらないね」
 何の悪びれもなく答える五十嵐

 オレは・・これからこいつと・・臨時風紀委員として、校門の前に立つのか

 「別に、お前から女に近付かなくても、向こうから来るだろ。それでいいんじゃないのか?」

 甘いマスクと、軽いテンポの話術を持つ五十嵐に寄って来る女は多い
 
 どんな女に対しても、優しく接しているこいつを見ていると、気遣いだけで疲れないのかと思う

 「甘いな皇紀も。待ってるだけじゃつまらないでしょ。運命の出会いっていうのは何時、何処であるかわからない。俺は常に攻めの方でありたいの」

 「・・・」

 そうこう言っている内に、玄関につくと、靴を履き替える

 「皇紀も、違う目で周りを見てみろよ。『こいも』ちゃん以上の可愛い女の子が見つかるかもしれないよん」
 
 五十嵐は、晶の事を『こいも』と呼ぶ
 オレが、妹を好きだと唯一知っている奴

 晶以上の可愛い女

 こいつも、今朝の母さんと同じ様な事を言う

 「だと・・いいがな」

 五十嵐はまだ、オレが晶と別れてきたことを知らない

 まぁ、泊めてほしいと言った時点で、勘のいいこいつの事だ気づいているんだろうな

 校門に平行に置かれたテーブルの右端にオレは腰掛けた

 女子の風紀委員長に一通りの説明を受ける

 多くの生徒は、違反を隠そうとしてくる。それを細部までチェックし、言葉で相手に認めさせる・・・と

 まぁ、何かをしていた方が、晶の事を考えなくても済む
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