神様、僕に妹を下さい

Act.168 サイド晶(あきら)

「晶、桜場と何かあった?」

 突然の質問に、ニンジンを刻んでいた手が止まった

 4時間目の授業、調理実習で今日のメニューは、親子丼とさつま芋のサラダ

 一緒の調理グループにいた、親友の二木 萌(ふたつぎ もえ)ちゃんが私の顔を覗き込んだ

 「何・・突然」
 萌ちゃんの顔を見つめ返し、ニンジンへと目を落とす

 「朝から、2人ともなんかおかしいのよね。桜場は授業中、壁ばっかり見て、あんたはずっとうつむいてるし。もしかして・・」

 ドキッ

 「桜場に告白されたとか」

 「え・・?」

 「あんた達仲良いから、付き合ってると思っている人、結構多いんだよ。時々、訊かれるからさぁ」

 この年代になると、ちょっと男子と話しているだけでも、勝手にウサワが一人歩きしてしまう事が多いけど・・まさか私と桜場が付き合ってるなんて・・

 ニンジンを刻み終えると、次に玉ねぎに取り掛かった

 「ねぇ、本当の所、桜場と何かあったんでしょ」

 「私がバカな事を言って、桜場を怒らせてしまったの」

 桜場とは、朝の出来事の以降、口を聞いていないどころか、目も合わせていなかった


 「何、何?桜庭って、皇紀先輩の話?まぜて、まぜて」
 
 そう言って、クラスメイトがぞろぞろと集まってきた

 「えっ?」

 戸惑う私の肩を、萌ちゃんがポンポンと叩いて、耳打ちした

 「晶が、皇紀先輩の妹だって誰も知らないから。たまにも話に混じってみなよ」

 「う・・うん」

 人のウワサと言うものに、興味のない私はあまりこの手の話に混ざる事はなかった

 でも・・今は・・皇兄の話

 「これ、見てみて。今日の朝の皇紀先輩の写メ」

 そう言って見せられたのが、朝の風紀委員をやっていた時の動画
 皇兄は、左手の人差し指をこめかみに軽く当て、隣の風紀委員の人に耳打ちしている

 「ひとつひとつの仕草がクールよねぇ」
 一人の意見に周りのみんなが、うんうんとうなづいた

 「でも・・この仕草は」

 「晶、やめなって」
 萌ちゃんが横でウインクする

 でも・・この仕草って、困った時や不機嫌な時に見られる皇兄の癖なんだけど

 「今度はわたしのとっておきの写メよ」

 ま・・まだあるの?
 
 「皇紀先輩、人気あるから」
 キョトンとする私の横で萌ちゃんが呟いた
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