神様、僕に妹を下さい

Act.172 サイド晶(あきら)

「晶?何作ってるの?」

 親子丼も、さつま芋サラダも出来上り、あとは食べるのみの段階で、もたついている私を見かね、萌ちゃんが尋ねて来た

 「ごはん、余ったから、おにぎり作ってるの」

 ラップに握りこぶし分の量のご飯を乗せて、塩をパラパラ、具は梅干。後はラップに包んで、手で握る

 「へぇ。意外に器用なのねぇ。ちゃんと三角になってる」

 昔から、三角のおにぎりだけは上手だと、皇兄に褒められたものだ

 ただ・・握りが弱いせいか、食べている途中ポロポロと崩れてくるのが問題点なんだけど


 「あれ?みんなは?」

 見渡せば、ここにいるのはほんの数人だけ

 「体育館へ男子を呼びに行ってる。すぐに戻ってくると思うけど。ほら、ウワサをすれば」

 萌ちゃんの言うとおり、廊下からゾロゾロと話し声と足音が聞こえてきた

 腹減ったーという言葉が、あちこちから聞こえてくる

 あれ・・?

 でも・・

 その中には、桜場の姿が見えない

 「桜場は?」

 「あいつなら、保健室。いつにも増して荒れてて、2年とやりあってさぁ」

 2年って・・そう言えば、2年生と試合をすると言ってた

 「2年の何組と試合だったの?」

 「1組だけどでもー」

 1組と聞くなり、私は教室を飛び出していた

 2年1組って皇兄のクラスだ。まさか桜場、皇兄と・・・!?

 保健室って、怪我の具合は?

 お昼休みに入ったせいで、廊下には生徒達が入り混じっている

 そんな中、肘の包帯を気にしながら歩いてくる桜場の姿があった

 「桜場怪我 大丈・・」

 『夫(ぶ)』とズテンというけたたましい音が同時に響く

 「う・・」

 どうして、私は、何でもない所で転ぶことが出来るんだろう?

 「お前の方が大丈夫かよ」
 床に平伏す私の頭上で、桜場がしゃがみ込んだ

 「私は大丈夫。いつもの事だから」

 いつもの事とは言え、転んだら痛いものだ

 「水玉」

 耳元でささやく桜場の声

 「パンツ見えてる」 

 な・・
 「ぎゃぁ!!」

 急いでめくれたスカートを元に戻し、辺りをキョロキョロと見回した

 「はぁ、俺って、お前と同類に見られてるんだな」

 「ん?」

 「いいから、教室に行こうぜ」
 桜場にうながされ、今は空の教室へと向った
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