神様、僕に妹を下さい

Act.175 サイド皇紀(こうき)

4時間目の終了のチャイムが鳴り終わり、五十嵐と教室を出た

 体育から戻ってくるクラスメイトとすれ違う間際、『あの1年、高山達に連れていかれたな』という声が聞こえてきた

 高山と言えば、体育会系でいつも3人でつるんでいる奴らだ
 時々、噂で生意気な1年を呼び出して・・礼儀を教えていると言ったら聞こえはいいが・・

 「何かあったん?」
 クラスの一人を捕まえて、五十嵐が話を聞いている

 端折ると、今日の体育は1年と合同授業
 どうやら、うちのクラスは、バスケットの試合で、一人の1年にボロ負けした様だ
 それが気に入らない高山達が、その1年を体育館非常口に連れ出したとか

 「どうする?皇紀」

 「・・・五十嵐、お前が行って見てきてくれ」
 1対1なら口を出すつもりはないが、3対1と聞いたからには、止めに行かなければならないだろう

 「げ・・俺が行くのぉ。皇紀は?」

 「オレは、風紀の顧問の所に話をつけに」

 「む・・。皇紀は女の子の為で、オレはヤローの相手かよ・・」
 とほほと肩を落とす五十嵐を横で、クラスメイトの一人が、思い出したようにつぶやいた

 『そう言えばその1年、盛んに桜庭君が試合に来ないのかと、聞いていたけど。知り合い?』

 「?」
 オレの知り合い?

 「ふふふ。知り合いなら、皇紀も行かないと・・って、おーい」

 五十嵐が言う前に、体育館に向って歩き出す。だんだん歩幅が早くなる

 非常口に着いた時、ガシャンという金属の音がして、鉄柵に桜場がもたれ掛かっていた

 「それくらいで、いいだろ」
 パンッと手を鳴らし、高山たちの目を覚まさせ、後から追いついた五十嵐に3人を任せると、ぐったりしている桜場を担ぎ上げた

 階段横にある、体育教師の臨時控え室に誰もいない事を確かめると、4畳半の畳の上に桜場を寝かせた

 顔、足に引っ掻き傷はあるが、たいしたことはなさそうだ
 腕の方が、鉄柵の角で切ったのか血が出ている

 試合は、桜場一人にボロ負けしたと聞く、相当体力を使ったんだろう
 傷の痛みより、体力回復に脳神経が働いているようで、目を覚まさない

 その方が手当てはしやすい
 腕の止血をしている間に、顔、足の軽い傷を手当てをした

 オレの事を探していたというのだから、言いたい事があるんだろう
 想像はつくが
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