神様、僕に妹を下さい

Act.176 サイド皇紀(こうき)

理屈が合わないと思ったことは、年上だろうが、目上だろうが、それを指摘する力を桜場は持っている

 敵を多く作りやすい力ではあるが、それは見ていて気持ちがいい

 だから、晶が髪色で風紀委員に捕まっているのを、助けなかったオレに、納得がいかないのだろう

 寝顔は、あどけないが、オレに向ってきた時は、大人の顔になっていた

 そろそろ、出血も止まったな
 肘を持ち上げ、当てていたガーゼを外す

 「う~ん。痛ってぇ・・・?」
 薄っすら目を開け、上半身を起こした桜場と目が合う

 「『にわ』?黒くしたのか?」

 にわ?

 頭を強くうったのか?錯乱しているようだ

 「大丈夫か?どこか強く打ったのか?」

 頭の表面には傷らしきものは見当たらないが、内部を傷つけていたら事は重大だ

 「あ・・いや大丈夫。皇先輩」

 両サイドに首をふると、目線が定まったらしい

 「肘の手当ての途中だ。痛いだろうが、我慢しろよ」

 エタノールで消毒し、患部に引っ付かない様、ガーゼに軟膏を塗って傷口に当てる。包帯もオマケに巻いておくか

 「うまいですね」

 「慣れてるからな」

 もちろん手当ての相手は、晶
 あいつは、ケガには事欠かない

 「ふっ」

 黙って、オレの手当てを見ている桜場の眼差しが、晶そっくりで笑ってしまう

 「何、笑ってんですか」

 「悪い、そっくりだと思ったらつい。その額の傷も、晶の痣と同じ位置だから」

 「!。痣ってあのケンカの時につけた?確かに同じ位置。じゃぁ俺、あいつと同類?」

 「ケンカ?何の話だ?晶の話だよな。何時の事だ」

 晶がケンカをしたと言うのは初耳

 早口で詰め寄るオレに、『よかった』と桜場がつぶやく


 よかった?よくないだろ


 「俺、今朝の件で、皇先輩の事がわからなくなった。でもよかった、先輩ちゃんと晶の心配してる」

 「心配?心配だけで済めばいいが、それで済まないのがあいつで・・いつも予想外の事をしでかして、頭が痛い」

 そして、オレの神経を狂わせる

 「あっ、それ俺も同感。あいつに関しては、心配し過ぎという文字はないと思う。それがわかっていて、どうしてあいつを・・突き放すような真似したんですか?」

 「聞いてどうする?」
 
 「理由によっては、俺があいつを守ります」
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