神様、僕に妹を下さい

Act.179 サイド晶(あきら)

あの時皇兄は、雑誌を片手に美容師のお姉さんとお話してた
 何を話していたのだろう・・?

 「晶ちゃん、本当にいいのね」

 「あ・・はい」
 髪を黒く染める再確認をされ、うなづいた

 「もったいないなぁ。こんなに綺麗な髪の色、カラーでも出せない人結構いるのよ」

 「でも・・校則違反に引っかかっちゃって」

 「そう。じゃぁ、お兄さんの努力も無駄だったのね」

 「!?どう言う意味ですか?」
 
 「え・・うーん」

 お姉さんはしばらく考えて、『もう、3年も過ぎてるし、いいわよね』と話始めた


 始めてこの美容院に来た時、皇兄はヘアーカタログの雑誌を見ながら、お姉さん達に尋ねたそうだ

 『髪色を目立たなくする髪のアレンジ方法はあるんですか?』

 どうしてそんな事を聞くのかと尋ねたところ、皇兄は私の方を見ると

 『あいつの髪色、遺伝なんだと説明しても中には納得しない奴もいるから、目立たないよう工夫していれば、中傷する奴らの反感も半減されると思って』

 そう答えると、皇兄は真剣にお姉さん達の話を聞いていたそうだ

 例えば、髪を編みこんで、後ろに束ね大きなリボンでとめたり、ポニーテールをして、バンダナでしっぽの部分を包み込むなど
 私がシャンプー等をしている間に、お姉さん達の髪を借りて、練習までしていたらしい

 『オレ、あの髪色好きなんですよね。決して人工では出せない自然な色でしょう。晶はどう思っているか知らないけど、周りの中傷が理由で嫌いにはなってもらいたくないから』

 
 そう・・確かにそうだ
 中学時代は、髪をおろしているより、縛っている時間の方が多かった

 『お前、動作がのろいし、洗面所を占領する時間が長い、お前の為にオレが遅刻するの恐れがあるから、手伝ってやる』

 そう言われながら、朝、15分早く起こされて、皇兄に髪をセットしてもらっていた

 でも・・ほんとうは・・真実は・・


 皇兄の優しさに触れると、自然に胸が熱くなる

 『好き』兄なのに、たとえ皇兄が私の事を、妹としてしか見ていなくても。
 けれど、この気持ちは、髪と共にここに置いて行こう

 皇兄が私の事を考えてくれていた様に、私も皇兄の為に出来る事を考える為に

 「あの・・髪ですけど・・」
 私の髪に、ゆっくりハサミが入れられた
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