神様、僕に妹を下さい

Act.189 サイド晶(あきら)

 「さく・・桜場!」

 桜場の身体を受止めたものの、重くて、私の身体も崩れ落ちそうになった

 「男を担ぐのは不本意だけど、仕方ない」

 最近聞いた声が頭の上ですると、桜場の脇がその男(ひと)に抱きかかえられた

 「ありがとうございます。・・あっ」

 声をあげた相手は、校則違反の取り消しをしてくれた2年の先輩だった

 「こんにちは。桜庭 晶チャン。久しぶりだね」

 久しぶりって言われても、特に親しいわけでもないのだけれど

 「4日前に会っていますけど」

 もちろん、違反を取り消してもらった日

 「4日も会ってなかったしょ」

 その前は、全然会った事もなかったはずですが

 「こんな・・奴、相手にする・・こと・・ない」
 桜場が薄目を開けて、首を振った

 「なんだお前、悪態をつける元気あるじゃん。手放すよん」

 「待って、お願い。このまま保健室まで運んで下さい」

 桜場は悪態はついているけど、身体は辛そう。特に目を開けていられないようだ

 「お願いです。先輩」

 「OK。俺も君に頼みたいことがあるから」

 先輩はウインクすると、桜場の身体を背負い一緒に保健室に向かった

 保健室のベットに桜場を置くと、すぐに腕をとられ、学校の調理室に連れて行かれた

 「な・何なんですか?」
 
 「ここを借りる手配はしてあるから、自由に使っていいよ」

 いいよ。って突然言われても、何の事かさっぱりわからない

 「あの・・私に料理を作れという事ですか?」
 まさか、調理室に来て歌を歌えとかはないだろうけれど

 「察しがいいね」

 
 キーンコーンと5時間目が始まるチャイムが鳴る
 次は、現代国語の時間

 「教室に戻らないと。私なんかより、もっと料理の上手な人いますよ。調理クラブの人にお願いした方が確実だと思います」

 「君じゃないとダメなんだ」

 「え?」
 
 「いや・・うちのシェフの味も口に合わないらしくて、ごく普通の家庭の味なら食べれるかなぁって」

 遠巻きに、私の家が一般並だと言いたいのだろうか?
 それにしたって、私じゃなくてもいいはず

 「本当に、お願い。でないと死んじゃう」
 両手を頭の上にあげ、合掌すると、先輩は頭を下げた

 死ぬって、また大袈裟な

 「えっと・・」
 先輩は頭を下げたまま、動かない
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