神様、僕に妹を下さい

Act.019 サイド晶(あきら)

「ふぁぁぁぁぁ。んー」

両腕を天井に上げて、大きく背伸びをした

何時もより30分早く起きたせいか、欠伸ばかりが出てしまう

今日は空、真っ青だなー・・なんて事を考えてると首筋に冷たいジュースを押付けられた

「晶 おはよー。何、早いじゃん。どうしたの?」

クラスメイト兼親友の二木 萌(ふたつぎ もえ)ちゃんがジュースを片手に私の前の席に座った

「失礼な。私だってたまには早起きするよ」

プイッと萌ちゃんの目線を反らしながら答えると萌ちゃんは何か気づいた様だった

「さては、うまく出来たんでしょ?」

「そうなの。はい、おすそ分け。一片だけど」

銀紙に包んだチーズケーキを萌ちゃんに渡す

「サンキュ。ちなみに、これは何点だったの?」

皇兄に味見の点数を点けられているのを萌ちゃんはちゃんと知っていた

ふふふ驚くなよ。萌ちゃん

「70点、過去最高なのだ」

「皇紀先輩にしては高い点数ね。よかったじゃん。そして、残りのケーキは、音楽室の彼に渡してきたわけだ」

おいし。と一口ケーキを食べる萌ちゃん

「それで、うまく行ったの?」

「んー。別にただ、食べてくださいって渡してきただけ」



放課後に音楽室の前を通るといつもピアノの音が聞こえてきていた

そっと覗くと、最初は女の人かと思うくらい綺麗な顔立ちの男の人がピアノを弾いている

長い指から奏でるピアノの旋律に、いつの間にか惹かれ、音楽室の外の壁に寄りかかって聴く様になった

でも、外だとやっぱり聞き取りにくくて、中に入って聴いてみたいという気持ちが強くなって、チーズケーキと一緒にお願いしてみた

『あの、これ食べて下さい』
自分でいきなり何をいってるんだろう?

『もらえる理由が解からないけど?』
彼はピアノを止めて、立ち上がった

『その・・いつも、無断でピアノ聴いてるから。出来れば中で聴かせてもらいたいんですけど・・・。ダメですか?』

『いいよ。朝と放課後にいるから、いつでもおいで』
彼は優しく笑って言ってくれた


早速、今日から聴きに行こうっと♪

にっと笑う私の横を、風が通り過ぎた

風で私の髪がなびく

窓を閉めようとした私の背後でざわめきが起こった
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