神様、僕に妹を下さい

Act.203 サイド晶(あきら)

プクッと頬を膨らまし、会長さんは椅子に体育座りをしていた

 「あいつと何、話してたんや?めっちゃ、親しそうやったやんか」

 「そんな事ないです」

 洗い物をしながら、受け流すと、五十嵐先輩の言葉を思い出していた

 
 『皇紀は俺の家にいるから、安心して』


 一週間近く、家に帰えらない皇兄が何処で寝泊りしているのか心配だった

 あのひと言で私の不安が消し去った
 先輩がいてくれれば、皇兄は大丈夫

 「俺の話、聞いとる?」

 後ろから抱きとめられ、首筋にキスされる

 「ひゃっ」
 キスが耳元に差し掛かったとき、ビクッと鳥肌が立って、ガシャンと皿を落としてしまった

 「ごめんなさい」

 「俺の方が悪いんや。つまらん嫉妬してしもたから。ももは離れとるんや。危ないから」

 しゃがみ込んで、お皿の欠片をひとつひとつ、つまむ会長さん

 「何、話していたんですか?」

 「あのな、明日で予算の件が片付きそうなんや」

 「ほんとですか!」

 「次の日は、週末に入るから、やっとデートが出来るし、何処か行きたいとこあるか?」

 明日で・・予算の件が片付く!と言う事は、皇兄が家に帰ってくる!
 お母さんにそう約束していたはずだから
 
 「うれしい♪」
 早速、家に帰って皇兄の部屋、掃除しよう

 「そんなにうれしいんか?」

 「はい。・・あ・・」
 
 会長さん、ごめんなさい。もう少しだけ、皇兄の事を考えさせて
 
 皇兄が家に戻ったら、私・・自分なりの決着をつけます
 そしたら・・ちゃんと会長さんの事を考えます。だから今は・・

 「私、今日はもう帰ります」

 「もうか?」

 「ちょっと、クラスメイトが風邪で2日間も休んでいるので、帰りに寄って行こうと」

 桜場は、風邪で2日間学校を休んでいた。超・健康優良児のあいつが寝込むなんてよっぽど酷いんだと思う

 「そな、途中まで送るな」

 学校の門を出て、金網越しの学校のグランドの端まで、先輩は一緒に来てくれた

 「あっ、お祭りだ」

 掲示板に、来週の日曜・神社の境内にてのお祭りの案内が掲示してあった

 「なんやもも、祭り好きなんか?じゃぁ、初デートは、祭りにしよか」

 「え・・はい」
 
 頷きながら、昔、皇兄に連れててもらった時の事を考えていた
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