神様、僕に妹を下さい

Act.204 サイド皇紀(こうき)

 「はー。これで大体終わったな」
 椅子の背もたれに大きく寄りかかると、軽く背伸びをした
 
 あとは明日、少しまとめて、コピーをすれば終了

 「皇紀先輩、終わったんですか?」

 「まぁな」
 沢村双葉が持ってきてくれた、コーヒーを一口飲んだ

 「よかったですね」
 彼女もコーヒーを一口飲むと、安堵の息をもらした

 「あんたのおかげだよ」
 正直、彼女がここまで手伝ってくれるとは考えていなかった
 会長よりよっぽど、働いてくれた

 晶とは正反対の黒髪を撫でると
 「ありがとな」と呟いた

 「先輩、あんたじゃなくて、いつになったら双葉って呼んでくれるんですか?」
 
 「・・・」
 いつか、その内、たぶん・・無言で笑って誤魔化す

 「じゃぁ、約束は・・」
 
 「約束?」

 「予算の件を手伝ったら、キスしてくれる約束。だめ・・ですか?」

 キス・・ね
 沢村双葉の唇は薄ピンク色の薄い唇の晶とは正反対
 弾力性のある、少し厚めの、赤みかかった唇
 
 何、観察してるんだろうね。オレは

 「約束なんかで、キスしてうれしいの?感情なんて入ってないし、きっと後悔する」

 「後悔するか、しないかは自分で決めます。だから、キスして下さい」

 「・・・考えておく。ところで、あんたの兄さんは?」

 また・・会長の姿がない

 「それなら、明日で予算の件が片付くって教えたら、喜んでももに会いに行きましたよ。これが片付いたら、デートするらしいから」

 成る程・・会長なりに気を使っていたわけだ

 「ほら、噂をすれば帰ってきた・・」

 彼女の言葉と同時に、鼻歌を歌いながら会長が帰ってきた

 「どや?だいたいまとまったか?こーちゃん」

 「ご機嫌ですね。会長」

 「分かるか?」

 分からないわけないだろう。こんなに、ニコニコ笑って子供のように目をキラキラさせているのだから

 「あー早う、日曜にならへんかな。ももの浴衣姿かわええやろーなー」

 「浴衣?」

 「せや、今度の日曜、近くの神社で祭りがあるんや。ももと一緒に行く約束したさかい。今度こそ誰にも邪魔されず、チュウするんや」

 チュウ・・て、はい。はい。キスの事ね

 まったく、この兄妹は発想が同じ事で

 神社の祭りねぇ、久しく行ってないが、そういう時期なんだな
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