神様、僕に妹を下さい

Act.021 サイド晶(あきら)

『あなた、桜庭先輩の妹なの?』

中学の頃、まったく話したことのない女子から声をかけられるようになった

『これ、桜庭先輩に渡してくれない?』

そう言って預けられるのが皇兄宛ての手紙。そして決まって

『桜庭先輩って好きな人がいるの?』

らしき事を聞かれてしまう

一回引き受けてしまうとその事が人づてとなり、同じお願いをたびたびされる様になった

要は配達人ならぬ、伝書鳩

私も皇兄にその旨をそのまま伝える日が続いたある日

『お前と兄妹だと思われるているとオレまでバカに見られるから、兄妹だということは言うな』

・・・・と皇兄から言われたっけ

それからあまり、兄妹だって言わないようにしてきたし、聞かれてもうやむやに誤魔化した

なんか、嫌なこと思い出したなぁ



「・・・あれ?ない!」

ガサゴソと鞄の中を探る

「どうしたの?」

「数学のノートがないの!?」

昨日、皇兄に宿題を教えてもらった数学のノートがない!

家に忘れてきたの?

「萌ちゃん、ちょっと家に電話して来る」

職員室前の電話機へと私は走る
機械音痴?の私はまだ、携帯電話を持たせてもらえなくて・・

10円入れて、ピッピッピッピッピッ とプッシュホンを押すとワンコールでお母さんが出た

「お母さん、晶だけど数学のノート私の部屋にない?」

「あら、晶ちゃんの数学のノート?そう言えば皇ちゃんが持ってたような・・」

皇兄・・・が・・どうして??

「あっ、ほんと?ありがと。お母さん」

ガチャンと受話器を置く

そうだ。昨日の夜、宿題を教えて貰って、そのままノートを皇兄の部屋に忘れちゃんだんだ


キーン・コーン・カーン・コーン 予鈴五分前の鐘が学校に響きわたった
 
皇兄、もう教室に行っちゃったかな?

正面門にいたから、今なら玄関にいるかもしれない

玄関に行くと予鈴の音を聞いて、急いで駆け込んでくる生徒が結構いた

「いないなぁ」

2年の下駄箱を覗くけれど、皇兄らしき姿は見えない

どうしよう・・・・

「やっぱりカッコいい・・ナマ皇紀」

ふにっ

1年の玄関でそんな声が聞こえてきた

「双葉、どうだったの?」

別の声も交差している

双葉って・・さっき皇兄に告白していた人・・だよね?

「軽く断られたけど、またアタックしてみるつもり。間近で見てもカッコいいもの」

パタパタとその声の持ち主は教室へと去って行く

ナマ皇紀・・ね

私は深々とため息をついた
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