神様、僕に妹を下さい

Act.211 サイド晶(あきら)

クチュ・クチュ
 甘く甘美な音に、私の意識は支配され、息つくことさえも許されなかった

 「ん・・・ふ・・・っ」

 皇兄の体温がむせ返りそうになるくらい熱くて、頭がくらくらする
 ・・・だめ!身体の力が抜けてもう、立ってられない

 「は・・・ぅ」
 意識が遠のく直前に、皇兄の呪縛から解放された

 「はぁ・・・はぁ・・」
 解放されてもなお、ジンジンと唇に皇兄とのキスの余韻が残っている
 
 私の・・初・・キス

 「こぅ・・皇兄・・私・・」
 突然すぎて、言葉が出てこない
 皇兄の顔も見ることが出来ない

 「あまい・・」
 皇兄は口元を抑え呟いた

 口の中から、すもも味の飴の姿が消えている

 唇が離される寸前、皇兄が私の舌から飴を絡め取って行ったのを感覚が覚えている

 「私、あの」

 「これで、約束・・果たしたからな・・双葉」

 掴まれていた腕の力が緩められ、皇兄の身体が元の机にうつ伏された

 「・・・なんて、言ったの?今」
 自分の身体が傾き、へなへなと床に座り込んだ

 「ふたば・・?」
 『あきら』ではなく、確かに『ふたば』・・と

 「はぅっ、うっ・うっ」
 込み上げる熱いものを両手で押さえ、立ち上がる

 押さえていないと、大声で泣き喚きそうで、堪えながら生徒会室を飛び出した

 「ひど・・い。ひどいよ。皇兄」

 キス、初めてだったのに・・初めてのキスの相手が皇兄で、私・・・私・・

 「ごほっ、ごほっ」

 校門まで一気に走ってきたせいで、呼吸がうまく出来なくなっていた


 「もも?あぁ、先に行っとって。後から報告書出すし」
 会長さんは、一緒にいた女の人を先に行かすと、私の顔を覗き込んだ

 「どうしたん、泣いとるんか?」

 「いえ・・走ったらむせてしまって、その反動で涙が・・」
 涙が・・止まらない

 「私の事はいいですから、お仕事して下さい」

 「好きな女が、泣いとるんのをほおっておける訳ないやろ」

 「それでも・・ほおっておいて・・今は誰とも話したくない」
 家に、帰りたい

 「もも?」
 伸ばされた会長さんの手を振り払う

 「私、『もも』って言う名前じゃない!!私にはちゃんとした名前があって・・」
 落ちてくる前髪を掻き揚げる

 『あきら』って皇兄に呼んでほしかった
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