神様、僕に妹を下さい

Act.213 サイド皇紀(こうき)

 「会長、いい加減離れてください」
 落ち込んで、オレに抱きついてきた会長を無理やり引き離す

 「つかぬ事を聞きますが、オレが眠っている間・・変な事してませんよね・・?」

 「へ・・変な事ってなんや」

 「いや・・例えば、オレにキ・・」
 キスしたかなんて、恐ろしくて聞けない
 まして、飴がオレの口の中にあると言うことは、深く・・濃いキスをした事になる

 「なんや?」

 「いや・・いいです」

 やはり、夢だったのだと・・思いたい

 会長と会話をしている内に、口の中の飴もなくなっていた

 「どうしたらええ?」
 話は、また、振り出しに戻り、会長が自称『もも』を怒らせてしまった件に戻った

 「だから、最初にも言った通り、謝るしかないでしょう。本人が帰ってしまったのなら、ほら、電話ででも携帯番号知ってるんでしょう?」

 「それが・・聞いてへんのや。ももといるとつい楽しゅうて、聞かんなんのを忘れ取ったちゅうか」
 オレと、沢村双葉が呆れた目で会長を見る
 
 連絡先も聞いていないのでは、話にならない

 「もう、休み明けに本人を見つけて、謝ればいいんじゃないですか?1年だと言う事はわかっているんでしょう」
 
 「せやけど・・やっぱりあかん、祭りに行くって約束したんや!」
 また、子供みたいな事を・・
 名前も、連絡先もわからないとなると探し様がない
 もう、陽も沈み学校内にも『もも』の事を知っている者もいないだろう

 「双葉も、本当に何もしらないのか?」

 「私も・・『もも』としか・・あの子の名前知っている気もするんだけど、女の名前って覚えない主義で」

 わかり易い性格な事だな

 「諦めて下さい。祭りならこの先もありますから。それとも他に彼女の事を知っている人の心当たりがあるなら、その人に聞いてみる事も出来ますが・・」

 本当に『もも』という人物は存在しているのだろうか?そういう疑問すらオレの中に生まれてくる

 会長は頭をひねり、考え込んでいた

 「そうや!一人おる。『もも』と親しげに話しとった奴。でも、あいつに聞きとうないし・・でも・・」

 「嫌でも、聞くしかないでしょう。会長が聞くのが嫌なら、オレから聞きます。教えて下さい、そいつの名前」
 
 会長に強引に詰め寄ると、オレの勢いに押されてボソッと呟いた

 「五十嵐や、五十嵐 潤」
< 213 / 350 >

この作品をシェア

pagetop