神様、僕に妹を下さい

Act.216 サイド皇紀(こうき)

 「皇紀、タバコ吸う?」

 「いらん」
 五十嵐にタバコのケースを差し出されたが、素っ気無く断る
 沢村兄妹と別れた後、五十嵐邸へ向う途中

 「怒ってる?」

 怒ってる・・だと?
 オレの目の前で、勝手に沢村兄妹のダブルデートの話が決まって、不機嫌にならないはずがない

 「嫌なら、断ればよかったじゃん」

 「・・・」
 五十嵐の言う事は、もっとも。嫌なら断ればよかったのだ。・・だが、真っ直ぐ家に帰るには、少し勇気がいる

 ほんの10日弱、家に帰らなかっただけで、あの家にどんな顔で、いや、晶にどういう風に接していいのか分からない自分がいる

 それに・・沢村双葉の事だ。五十嵐に指摘されたが、何時の間にか名前で呼ぶようになっているし

 「五十嵐・・オレ、沢村双葉とキスしたかもしれない」

 「え!!・・ってその、かもってなんだよ」
 
 「本人に聞いても、してないって言うから定かではないんだが、寝ている間に、無意識にやった感触が残ってるんだ。オレもしかして、あいつの事・・はぁ」

 「好きになりかけてる?」

 「それが、わからない」

 「ふーん。皇紀のこいもちゃんに対する気持ちって、10日会わなかっただけで変わるもんなんだ」

 晶に対する気持ち・・そんなの変わるはずがない
 ないが・・沢村双葉の存在がオレの中に入ってきたというか・・

 「晶は・・オレの中では、別格の存在。それはたぶん、一生変わらない。ただ、別の感情が生まれたのか、自分自身わからない」
 
 「そう。答えはきっと、日曜日に出ると思うぜ」
 
 「なんだ?また、予言かよ」
 また、神様とか言い出すんじゃないだろうな

 「予言・・ていうか、俺は、きっかけを作ってあげただけ」

 「は?」

 「いや・・まぁ、それはお楽しみと言う事で。俺ってこんなお節介キャラじゃないのになんでかな、きっと妹がいるとこんな気持ちになるんだろうな」

 タバコを足で踏み消すと、『俺も、タバコ止めよっかな』と五十嵐は呟いた

 「よし、今日は飲もう!」

 「は?」
 さっきから、五十嵐の言動がさっぱり理解出来ない

 「お前、大丈夫か?」
 もしかして、もう酔っているのでは?

 「俺はいたって、まともよん。ただ、今のうちに謝っとく。ごめんな皇紀」

 
 この後、お酒の入った五十嵐は、何回もオレに謝っていた
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