神様、僕に妹を下さい

Act.217 サイド晶(あきら)

 「晶ちゃん、晶ちゃん。いい加減に起きなさい」

 バッとカーテンが開けられ、日差しが瞼を通して入ってきた

 「この子はまた、皇ちゃんのベットで眠っちゃって、皇ちゃんが知ったら怒るわよ」

 「ん・・ごめんなさい。ケホッ、ケホッ。お母さん、のど痛い」
 皇兄が家に帰ってこなくなった日から、私は皇兄のベットで寝起きするようになっていた

 起きて真っ先にのどに異変を感じた
 ジンジンと扁桃腺が痛い

 「やだ、風邪でも引いたの?それとも、のどを痛めるようなことでもした?大声をあげたとか?」

 「ん・・・。したかも」
 ムクッと起き上がり、のどを外から押える

 昨日、学校から帰ってきてから、お母さんに聞こえないように声を抑えて泣いたのがおそらく原因だろう
 枕に、顔を沈ませてずっと、泣いていから・・

 「のど飴でも舐めておきなさい。あと、皇ちゃんが明日帰ってくるから、シーツとか洗濯しておくのよ」

 「わかった」

 そっか皇兄、明日帰ってくるんだ
 あんな事が起きる前は、帰ってきてくれるのがうれしかったのに、今はわからない
 どんな顔で、皇兄に会えばいいのか、接しればいいのか、以前の自分がどんなのだったのか全然わからない

 「あーもぅ・・やだよ。こんな自分」
 ファーストキスの相手は、皇兄でありたいって自分で願っておきながら、願いは叶ったはずなのに、何このやりきれない気持ち

 唇に触れながら、皇兄とのキスの感覚を思い出す
 
 「やわらかくて、温かかったなぁ」
 ぱふっと枕にうつ伏せになり、横を向く

 それでいて、息ができないくらい熱くて、頭がくらくらして、自分の舌が自分のものではないような、あんな感覚知らない

 「双葉・・か」
 この一言がなければよかったのに
 皇兄は双葉さんとキスしたと思っている

 双葉さんだと思ったから、キスしたのかもしれない
 そうでなかったら、頼まれたって妹とキスなんてしないよね
 
 皇兄は、私の事なんて何とも思ってない
 悲しいけど、それが現実

 「さてと、洗濯でもしようかな」
 自分に、気合をいれ、ベットシーツを勢いよくはぐった

 空中にシーツがふわりと舞う
 そして、枕と一緒に水色のパスケースがポテッと落ちた

 「何?」

 枕の下から出てきたよね?
 
 「私の・・写真?」
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