神様、僕に妹を下さい

Act.022 サイド皇紀(こうき)

学校の門をくぐると、突然目の前に黒髪の女が立ちはだかった

鞄を両手で抱きかかえ、真っ直ぐオレを見ている

後ろから来ていた五十嵐が、軽くオレにぶつかった
 
「こんなところで止るなよ。皇紀」

オレだって、好きで止ったわけじゃない

赤のタイピンを着けているという事は晶と同じ1年・・か

学年ごとにタイピンの色分けされているため、学年は一目で分かるようになっていた

「俺、お邪魔みたい。先行ってるよん」

「いろよ。かまわない」

五十嵐を引き止める

「で、なに?」

急いでるんだけど、用件を早く言ってほしい

「1年2組 沢村双葉 わたし、あなたのこと好きです」

沢村と名乗る女は、言葉を選んで発音よく言った

色んな告白を受けたが、こんな人前で堂々とされたのは初めてだな

オレ達の横を後ろから来た生徒達が、こちらを見ながら通り過ぎて行く

「沢村だっけ?度胸は買うけど、あんたのことは興味ない」

「・・・・今から、興味をもってもらえませんか?」

スーと涼しい風が背中を通り過ぎる

校舎に顔をあげると、二階にある1年のクラスに目が行った

正確に言えば、晶のクラスを目で追っていた

窓越しの数十人の姿の中に、晶の姿を見つけた

こんなに離れているのに、なんで一目でわかってしまうんだろう?

「だめですか?桜庭先輩」

沢村の質問にも、ほとんど耳に入っていなかった

晶から目を離したくない

ほんの数秒がとても長く感じられた

スーと晶は窓際から離れて行く

「桜庭先輩?」

「あんたに、興味を持つことは絶対ない」

オレは、はっきり言い放つと彼女の横を通り過ぎた


 
 
「皇紀、断るにも、もう少し優しく言ったらどうよ?」

五十嵐が、内履きに履き替えながら言う

「優しくって?」

「ものにも言い方ってあるだろ」

「下手に気を持たせるの方が、よくないだろ」

「そうかぁ?お前が優しく笑って『ごめん』て言うだけで、彼女達は満足していくと思うけど」

「好きでもない女に、愛想を振りまくつもりはない」

ピシャと言い放つと、1年校舎に向かって歩き出す

「そっち、1年校舎だぜ」

「あぁ。ちょっと」

オレは片手に数学のノートを握り締めていた
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