神様、僕に妹を下さい

Act.223 サイド晶(あきら)

 「晶ちゃん浴衣、座敷に出しておいたわよ」

 リビングで、双葉さんとお茶を飲んでいるとお母さんが声をかけた

 「浴衣って何の事?」

 「私が頼んでおいたの。行くでしょ、お祭り」
 澄ました顔で紅茶を飲みながら双葉さんが横で言う

 そう言えば、会長さんとお祭りに行く約束してたっけ

 「ねぇ、浴衣見せてよ」
 
 2人で座敷に行くと、紺の水玉の柄と黒地の紫陽花柄の浴衣がハンガーにかかってあった

 何年ぶりだろう。久しぶりに見た
 いつも、悩むんだよね。どっちを着て行くか?しかも決まって当日に悩むの

 「ねぇ、どっちを着ていくつもりなの?」

 「私・・うーん?」

 私がいつも悩んでいると、皇兄が障子戸を開けて現れ、3秒も経たない内に決めてくれたんだよね

 『この前は○○柄だったから今年はー』と

 この前着たのって何年前だっけ?あの時どっちを着たんだろう?

 「ねぇ、どっち?」

 「えーと・・」

 水玉?紫陽花?どっち

 「皇・・」
 皇兄どっちにしようか?と言いかけて言葉を止めた。皇兄はいない

 「ねぇ、決めてないなら、私紫陽花の方着てみたいんだけど。浴衣持ってなくて」

 「いいよ。双葉さん背が高いから似合うと思う」

 「じゃぁ、ももは水玉の方ね」

 「ううん。帯び1つしかないし双葉さんが着て。私、どっちも選べないから」

 それに、髪だって切ってしまったから浴衣も似合わないかもしれない

 2階の部屋に行き、白色のワンピースに着替えて座敷に戻ると、浴衣に着替えた双葉さんが立っていた

 「どお?」
 クルリと360度回転する双葉さん

 「良く似合うよ」

 「やっぱりそう思う?やっぱり元がいいからよね」

 双葉さんはほんとに嬉しそうで、浴衣を貸してあげてよかったと思った

 私達はお祭りのある神社に向かって歩き出した

 「そう言えば、今日、もものお兄さん帰ってくるんだって?お母さんになるべく早く帰らせてって、言われちゃった」

 「うん」

 「お兄さんて、1人暮らしとかしてるの?大学生?」

 「え、えーと」

 まだ・・気付いていないみたい。私が皇兄の妹だという事を・・

 「双葉さん実はね、私・・あっこの川、いっぱい魚いるの」

 懐かしい川が見えてきて、思わず橋の入口まで駆けていた
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