神様、僕に妹を下さい

Act.225 サイド皇紀(こうき)

沢村双葉が着ている浴衣が晶のものであるはずがない。そう、思いたいが・・晶の浴衣だと、オレの頭が赤信号を出している

 「双葉、ももは何処や?」
 沢村会長が辺りをキョロキョロと見回す

 「今まで、一緒にいたのよ。この川に魚がいっぱいいるとか言ってたし」

 トクン・・トクン・・自分の鼓動が早くなってくるのがわかる

 顔を上げ、橋の入口から渡ってくる人物を見る

 違う。これも違う

 あいつが、まともに橋を歩いているなら、とっくにここについているはず。途中で、オレに気が付いて引き返さない限り

 浴衣姿のカップルの影から、白いワンピースを纏った晶の姿が現れた

 「どうかしたんですか?先輩?」

 「・・・」

 オレが知っている『もも』の特徴

 ももは、茶髪

 橋の手摺に両手をついて、つま先立ちをした晶の髪は、短くても見事なブラウン

 ももは、背が小さい

 身長150cmの晶には、橋の手摺は高すぎて、川を覗き込めないでいる

 あいつ・・何する気だ?
 
 晶は、両手で身体を持ち上げて、右足を手摺に乗せた。当然次は、左足の番だが、スカートが邪魔をして上がらないようだ

 ワンピース姿で、橋の手摺に登る女など晶意外に何処にいるだろう

 ももは、目がクリッとしている

 手摺の上にとうとう登る事が出来た晶は、大きな瞳で左右を確認した

 
 なんで・・今まで気付かなかった
 会長が言っていた、ももの特徴はすべて、晶に当てはまっているではないか

 だったら、会長の恋の相手は・・

 「あきら」
 オレは小さく呟きながら、晶に向かって走っていた

 「もも!」
 オレの行き先に気付いた会長の叫ぶ声が聞こえる

 「ふぇっ」
 会長の大声に反応した晶はバランスを崩し、川の方向へと傾いて行った

 間に合うか!間に合わせる!!

 「この・・バカ!」
 滑り込むように腕を伸ばし、間一髪で晶の両腕を掴む

 「くっ・・」
 この腕は絶対放さない。引き上げられないなら、晶と一緒に川に落ちるまで

 懇親の力を込めて、晶を引き上げ、自分の元へ手繰り寄せた

 トンッと晶の顔がオレの胸の中に埋まる

 「バカ」
 
 なんで、こう、こいつはバカなんだ

 でも、一番バカなのはオレ
 晶がこんなに近くにいたのに、気付かなかったなんて
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