神様、僕に妹を下さい

Act.226 サイド皇紀(こうき)

 「皇・・」

 「もも!大丈夫やったか。こーちゃんも」

 晶を抱きとめていられたのは、つかの間だった

 会長がオレ達に駆け寄ってきて、晶を引き離した

 「ケガないか?なんでなんあ無茶するんや」

 会長が晶の柔らかい髪を撫でている
 
 「くっ」 
 他の男が晶に触れているのを見ると目を背けたくなる
 オレが触れたら、また・・あいつは蕁麻疹を出すのか

 「ちょっともも、皇紀先輩がケガをしたらどうするのよ」
 オレの服についた汚れを落としながら、双葉が晶に言った

 オレのケガなんてどうでもいい
 晶さえ無事なら

 「ごめんなさい」
 
 そんな泣きそうな顔で謝るなよ。抱きしめたくなる
 
 「いいよ、双葉。お互いケガもなかったし、今度から気をつければいい事だ」
 服装を整える振りをしながら、晶から目線を逸らす

 「どうしたんや?もも」

多分、オレのせいだろう
様子がおかしい晶に会長が優しく声をかけている

 「・・・やないな。ごめんな、今までほんまの名前を聞かんで。ちゃんと教えてくれるか?」

 会長が、晶に名前を尋ねている



 『彼女が素性を明かさなかったって事は、教えたくない理由がある訳だろ』
 
 五十嵐の・・あの言葉 

 晶が、本名を言わなかった訳・・?

 「私、私の名前はー」

 「『さくらにわ あきら』っていうのよね」

 「ゲホッ」
 さ・・さくらにわ!? 晶より先に答えた双葉の言葉に咳き込んでしまう

 「『あきら』っていう男みたいな名前より、『もも』の方が絶対発音とかもカワイイと思わない?どう思う?」

 「晶は、可愛ええと思うけど・・『もも』もかわええし・・」

 「ねぇ、ももに改名しちゃいなさいよ」

 「あ・・と・・そうですか」
 晶は返答に困り、目を伏せた

 晶が本名を言えなかった半分は、周りの強引さに流されたんだな

 オレは、晶という名は一番女らしい名前だと思うよ

 「双葉、やっぱり『もも』は『晶』がええんやないかと思う。『晶』って呼ぶで、ええよな・・なんて聞くことあらへんな」

 会長が晶の掌を握り締めながら、優しく目を細めた

 「オレは、『もも』の方が彼女に合ってると思いますが、急に呼び名を変えても違和感があるのではないですか?」

 でも、ダメだ。目の前でお前が、他の男に呼び捨てされるのは嫌だ

 オレの意見に晶が驚いたように顔を上げた
 そして、ゴクンと息を呑むのがわかった
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