神様、僕に妹を下さい

Act.229 サイド皇紀(こうき)

まるでここは、生き地獄だ

 何が、沢村双葉の事を気にし始めているとか、色々と五十嵐にも言われていたが、晶の姿を見た途端、それは一切消し飛んだ

 あぁ、やっぱりオレは晶が好きだと実感する

 「ももは祭り、久しぶり言うとったけど、前は誰と来とったんや?」

 神社に向かって、左から晶・会長・双葉・オレと横並びに歩いていた

 「それは・・」
 言葉を濁している晶

 「彼氏か?」

 「違います。そんな人・・いません。こぅ・・あ・・兄とです」

 そう、オレと

 「大学生のお兄さんがるのよね。今日、家に帰ってくるんでしょ」
 横から、いかにも知ってますとばかり、双葉が口を挟んだ

 大学生?
晶とは1歳しか違わないし、どこからそんな話になっているんだか
 今日、帰るつもりではあったが・・

 「なーんや、兄ちゃんとか。妹と一緒に祭りにくるなんて、ももは兄ちゃんと仲ええんやなぁ。それとも、兄ちゃんに彼女が出来へんで、かわいいももを連れて歩きたかったとか。俺なら、双葉となんかぜーったい出かけへんもん」

 悪かったな。彼女が出来なくて
 でも、晶が可愛いのも
祭りを一緒にいられる理由にした事も否定しない

 「それは違います。こ・・兄は私と正反対で、頭も良いし、容姿もカッコいいし、女の人にもモテますよ」

 聞いていてオレが恥ずかしくなった
 もう何も言うな晶
オレを『皇兄』と呼ぶのを意識して『兄』と言い直しているのも全て

 「ももは、お兄さん思いなんやな。そんなとこも、だーい好きや。双葉もちぃとは見習い」

 「うるさいなー。オニイチャンも皇紀先輩くらいカッコよかったら、一緒に出かけてあげてもいいわよ。あっ!リンゴ飴発見」

 双葉はリンゴ飴の屋台を見つけると、慣れない足取りでかけていった
 浴衣が初めてというから、下駄を履くのも初めてなのだろう

 「なんちゅう、生意気なやっちゃ。それに比べて、ももはかわええやろ。こーちゃん」

 オレと会長の間にいた双葉がいなくなり、会長がオレに同意を求めてきた

 「え・・えぇ、そうですね」
 
 会長の隣に晶がいるのに、遠い

 「会長はももと初めて会ったのは何時なんですか?」

 会長と晶は何時から親しくなったんだ?オレの記憶が確かなら・・

 「ももとは・・」

 「あっ、どんぐり飴!」
 晶は思い立った様に叫び、会長との繋いだ手をするりと放すと、どんぐり飴の方へ駆けて行った
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