神様、僕に妹を下さい

Act.237 サイド晶(あきら)

どうしたんだろう皇兄。いつになく真剣だった

 自動販売機を見つけ、希望の無糖コーヒーを買って後戻りする

 「ねぇ、聞いてる?」

 「え?」

 ぼーっとする私に、双葉さんが持っているリンゴ飴を差し出した

 「これあげるから、コーヒーを渡したらオニイチャンと消えてくれない」

 「はい?」

 「あんたも鈍いわね。皇紀先輩と2人っきりにしてほしいの。あんただってオニイチャンと2人っきりになりたいでしょ」

 皇兄と双葉さんを2人っきりに・・
 皇兄は・・今度は私と間違えず双葉さんとキスするのだろうか

 あぁ、だめだ。私何考えているんだろう

 「う・・ん。いいよ」
 皇兄が側にいると、違う事ばかり考えてしまう
 離れた方がいい

 「ホント、だったら早く戻りましょ」

 双葉さんに促され、早歩きになる

 皇兄と会長さんは屋台の裏の方に移動していて、私達の姿に気付いた皇兄が近付いてきた

 「缶コーヒー、サンキュ。双葉、行くぞ」
 私から缶コーヒーと預けられた財布を受け取ると、皇兄は双葉さんと人ごみの中に消えていった

 いったいなんだったんだろう?
 あまりの展開の早さに、しばらく2人が消えた方向を見ていた

 「もーもっ。そのコーヒー俺の?」
 会長さんが後ろから両手で私を抱きしめた

 「は・はいっ。あの会長さん、双葉さん達行っちゃったけど・・」

 「ん・・行ってしもたな。俺らはあっちで話せぇへんか?」

 話・・で思い出した
 私、会長さんに本当の事を言わないといけないんだ

 「会長さん、さっきの話の続きなんですけど」

 「なぁ、ももはこーちゃんが人に頭下げたとこ見たことあるか?」
 
 ?

 「こーんな風に、深々と頭を下げたとこある?」

 会長は腰を90度に曲げ、深々と頭を下げた

 皇兄の頭を下げた姿?
 私の前での皇兄は、いつも冷静で、目上の人に頭を下げることはあってもこんなに深々と下げることはなかった

 「ありません・・けど」

 「俺も、今まで見た事なかった」

 「あの・・何が言いたいんですか?」
 話がうまく掴めない

 「こーちゃん、深々と頭を下げて言うたんや。『晶は大事な妹だから、宜しくお願いします』って」

 こ・・・皇兄!!

 「皇兄が、そんな事を・・」

 あの真剣な表情は、このためだったんだ
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